大切にしてきた「その場の空気」と「体調管理」
座長は、まる子役の声優TARAKOさん。僕は「座長」って言い続けてきたんだけど、彼女は、よく周囲に気を遣う人でね、「そんなに気を遣わなくていいよ」って言うぐらい気配りする人。僕はやっぱり年長者だから、彼女を立てて現場の雰囲気づくりに徹しようと思ってやっていた。
僕が大事にしてきたのは、まず「おはようございます」って元気に挨拶をして入っていって、みんなに声掛けして、冗談の一つも言いながら、その場の空気を温めること。人の気持ちなんか一瞬にして変わっちゃうから、まずは「楽しくやろう!」って決めてスタジオへ入るように心がけてきたんだ。
あと大切なのは体調管理。一番気になるのは、みんなの健康面だったなぁ。
声優として、声が出なかったり、体調の悪かったりするときにしゃべるのは本当につらい。お互いに「風邪ひいてるな」とか「体調悪いな」っていうときは、口に出さなくてもすぐわかるから、心の中で「負けるな、負けるな」ってエールを送っていた。同業者なら言わなくても頑張っていることはわかるからね。
僕自身、もともと声帯が弱くて、若いときは声も細かったし、〝鍛えられてない〞ってすぐわかるような声で、使いすぎるとダメになっちゃう。だから、そこにコンプレックスも感じていたんだ。忙しいときは一日に何本も収録したりして、声を気遣う余裕すらないような時期もあったから、実は、いまが一番、声の調子はいい。
こうして僕が44歳のときに始まった『ちびまる子ちゃん』を、75歳で引退するまで一年一年、努力しながら、健康で楽しく続けてこられたことは、生涯のかけがえのない財産だと思っている。