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She’s the head honcho
around here.

(彼女はこのあたりで一番えらい人だよ。)

【キーワード】
head honcho = ボスのなかのボス。一番えらい人

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一番えらい人は誰? 米軍に広まった意外な日本語


僕のおじいさんやお母さんはよく、head honcho(ヘッド・ホンチョー)という単語を使っていました。honcho の響きが、なんだか poncho(ポンチョ)に似ているので、僕は子どもの頃、これはスペイン語風の英語だと思っていたのです。しかし実は、日本語の「班長」に由来する英製和語でした。

この語は、第二次世界大戦の頃にアメリカの軍隊で広まったそうです。大戦後も、朝鮮戦争やベトナム戦争下の軍隊で使われましたが、一般のアメリカ人にまで普及することはありませんでした。

しかし1964年に、共和党大統領候補のバリー・ゴールドウォーターが、テレビで自分の選挙運動の主任について、"We call him the hon-cho out here. He's the head hon-cho."(われわれは彼を「ホンチョー」として招いた。彼こそが「ヘッド・ホンチョー」だ)と紹介。その時から、アメリカのメディアなどで、head hon-choが使われるようになったのです。

honcho の一語ではあまり使われず、通常、head honcho という熟語で使われます。head は「ボス」のこと。「班長」の英訳ともいえます。hon-cho は、日本語の「班長」に由来するので、head honcho とは、妙な言い方ですね。しかし、英語のネイティブにとっては、「ボスのなかのボス」というニュアンス。つまり、一番えらい人、ということです。

アリゾナ州で育ったゴールドウォーターも、honcho を、アメリカの南西部でよく使われるスペイン語由来の単語だと思っていたようです。残念ながら、現在も多くのアメリカ人は honcho が日本語由来だと知りません。