内野 以来、フランクにおつき合いさせていただいているので、年齢差を意識することがなかった。それで改めて、草笛さんと僕はどのくらい違うんだろうかと調べてみたんです。そしたら、親と子くらい違いましたよ。35歳ですって。
草笛 へー。私、そんなに上?
内野 いや、僕も「そんなに下?」と思いましたけどね(笑)。いつも草笛さんがフレンドリーな雰囲気で接してくださるからでしょう。
草笛 「くださる」なんて、いい言い方しちゃって。(笑)
内野 ミュージカル、舞台、ドラマ、映画……芸能史の中心を歩いてこられたような大先輩なのに、まったく垣根をつくらない。そう、草笛さんは先輩というオーラを共演者に出さないんですよね。
草笛 『裸足で散歩』では宝田明さんも一緒だったじゃない。楽屋にピアノがあって、一緒に発声練習したの覚えてる? ♪ハ、ハ、ハ、ハ~って。
内野 そのときの僕はF(高音のファ)までしか出なかった。「もう、これ以上は出ませーん!」となって、宝田さんから「君はFまでだね」と言われたのを覚えています。
草笛 でも、よく声が出ていたわよ。宝田さんも「ミュージカルに出たほうがいいよ」と勧めてたもの。
内野 ちょうどその舞台を、ミュージカル『エリザベート』のトート役を探していた演出家の小池修一郎さんが観にいらしていて、声をかけていただいたんです。それでおふたりと発声練習をすることになったのか、前後関係は忘れてしまいましたけど、僕にとっては初のミュージカルへの挑戦で。
草笛 私、観に行ったわよね。
内野 終演後、「もっと自分自身が作品に酔わなければダメよ。自分が酔わないと、人を酔わせられない」とアドバイスされました。
草笛 ずいぶん偉そうなこと言ってるわね、私。
内野 2000~05年の間にトート役を何回か務めたんですが、05年くらいのトートは、やっと自分らしさを出せるようになって。エロくてカッコよかったんじゃないでしょうか(笑)。でも00年のときはだいぶ堅かった。草笛さんのアドバイスは、そのとおりだと思いました。