将来は同じ敷地内に弟夫婦が住む予定

もともと両親は夫婦仲が良かったのですが、コロナの時期に、母が離婚する、と騒ぎだしました。ケイさんはあわてて事情を聞きました。「お母さん、どうしたの」。どうやら母は、父の浮気を疑っていたのです。ケイさんが父を問い詰めると、「本当にありえない」と一蹴。

結局は誤解だったと分かり、今となっては笑い話です。でも当時、母は真剣に離婚を考えていました。リモートワークが可能になったので、ケイさんはひんぱんに実家に帰りました。父にも事情を聞き、両親の仲を取り持ちました。

「母があの時離婚する、って言い出さなかったら、もしかしたら実家に戻らずに別の所に住んでいたかも」。それまでは、夫婦2人で元気に暮らしているからと、ケイさんは心配していませんでした。両親は大丈夫と思って、放っていました。でもこの騒動で、親の老いを実感し、「Uターンだな」と決心しました。

老後の住まいが親元でいいのか――東京を離れると決める前、ケイさんも改めて考えました。犬が飼えて、弱ってきた親の近くにいられる以外にメリットがあるのか? 結果、地元が「いいな」と思えました。魅力の一つが「天気が良いこと」。「天気が良くて、冬が寒くならない。日照時間がすごく長い。それに、東京や他の土地に比べて地震もあまりない」。ケイさんの実家のエリアは、九州でも地震が少ないそうです。

それに、妹と弟とも近くなれます。彼らは、それぞれに家庭を持って、九州の別の都市に住んでいます。すでに相続の相談もしました。親に万一のことがあった場合、相続財産は本来、きょうだい3人で均等に分けます。でも、本家である実家の家と土地は、相続できる子のいる弟に継承させることに。弟は定年後、子どもも独立した後に、いまは両親が住んでいる実家を受け継いで、夫婦で住むつもりと言っています。

となると将来は、同じ敷地内の別棟にケイさんが、母屋に弟夫婦が住むことになります。「そうしたら、一人で暮らしていても安心でしょう?」。でも、弟が継ぐ土地に姉が平屋を建てて住んで、問題はないんですか? 「大丈夫、大丈夫。きょうだい仲いいし、うちの土地広いから」。実家の土地は、畑と先祖代々の墓があるほど広く、かつては借家も建っていました。その家屋を解体して更地にしてある場所に、ケイさん邸を新築する予定なのです。

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