60歳定年で転身決意は次の選択肢を広げる
Uターンすることで少しだけ心配なのは、両親が安心しすぎてがっくりきちゃうんじゃないか、ということ。「今までは基本的に、料理するのも何でも、全部自分たちだけでやっていた。気が張っていたのが、私が帰ったら気が抜けちゃうんじゃないかと。大丈夫とは思うけれど」
なので、実家の隣に住んでも、心を鬼にして、両親には今まで通り、自分たちの分は料理をしてもらおうと思います。それでも夜ご飯は両親の家で一緒に食卓を囲むなら、お互いに安心です。犬を飼うのも、親のことを考えた面もあります。「きっと、私より父になつく」と予想できるほど犬好きの父は、犬を散歩に連れて行くでしょう。それは親の健康のためにもいいかなと思っています。
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親元に帰ってあげたいと思いつつも、東京のいまの暮らしを捨てられない、という人は多いのではないでしょうか。その点、東京に未練がない、と言い切れるケイさんはあっぱれ、です。友だちが遊びに来るからいい、地方からでも海外にも行ける、という指摘はその通り。東京にいたって、それほど頻回にはイベントごとはしませんから。とはいえ、ケイさん本人も「健康的な暮らしがしたい」と自覚している通り、いまが体力的にも精神的にもギリギリで、ほぼ燃え尽き寸前だからこその決意、かもしれません。
ケイさんがUターンできるのは、いくつかのラッキーが重なったおかげです。1、両親ともに今も元気なこと。要介護状態でないので手間もお金もまだかかりません。2、実家に、家を建てられるだけの土地が余っていること。3、きょうだい仲が良く、実家の敷地に自分の家を建てても文句を言われないこと。4、東京で購入していたマンションが高値で売れそうなので、老後に借金を抱えずに済みそうなこと。5、地元が、田舎とはいえ日常生活に困らない程度にインフラが整っており、災害等で帰宅困難な地域でもないこと。5などは偶然です。
老後の家計を考えると、東京で正社員として稼いで、定年後は地方に住む、というケイさんの選択は、経済合理性が高そうです。生涯をかけた出稼ぎみたいなものですね。車のガソリン代を除けば、地方での日々の生活費は、東京より安いでしょう。熱心に投資運用をしていなくても、ある程度は年金で賄えるかもしれません。さらに親元ならば住居費もかかりません。濃密な人間関係は懸念材料ですが、Uターンも含めて地方移住は、今後、もらえる年金が不透明な中での、老後の暮らし方の有力な候補に違いありません。
それに、すぱっと60歳定年で転身する、という早めの決断は、次の選択肢を広げます。例えばケイさんが、もし、万一、地元に戻って5年後に、再び東京や海外でバリバリ働きたいと思ったとしても、まだ65歳です。おそらく人生の再立て直しが可能でしょう。これが、地方に戻るのが70歳だとしたら、5年後でも75歳。その年齢から、再び県外に出るなど路線を変更するのは、かなり厳しいでしょうから。
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