縁のある人とは幾度でもめぐり会う
朝ドラ「あんぱん」は「アンパンマン」で知られるやなせたかしさんと奥様の物語。戦前から戦後の激動の時代を懸命に生きた夫婦の人生を描きますが、やなせさんとは不思議なご縁で結ばれているような気がします。
やなせさんが、「アンパンマン」のテレビアニメ化で世間から大きな注目を浴びるのは、69歳の時なのですが、私はそれ以前からやなせさんを知っていて……。私が小学生の頃、文通をしていたのです。
私は10歳で大好きだった父を亡くし、ふさぎがちだった時、やなせさんが書かれた「人間なんてさみしいね」という詩に出会い、凄く救われました。父だけが一人で死んだわけではないんだと思えたからです。気持ちを手紙に書いてやなせさんに送ったところ、驚くような速さでお返事をくださって。そこから文通が始まったのですが、最後にお手紙を書いたのは15歳の時。いつもすぐに返事をくださるので、私の方から文通をやめてしまったという(笑)。なんて失礼なことをしてしまったのだろうと思っていたのですが、今回の件で、まだご縁は続いていたのだなぁと不思議な気持ちがしています。
実は、朝ドラのテーマを決める時も不思議な偶然があって……。どんな物語にするかという会議の時に、私は数人の候補を考えていたのですが、「やなせたかしさんはどうでしょう?」と提案しかけた時、「たかし」の「し」まで言うか言わないかのところで、プロデューサーが鞄から1冊の本を取り出したのですが、やなせさんの本だったのです。やなせさんが手掛けた「アンパンマンのマーチ」の歌詞が、子ども向けにしてはあまりに哲学的で、興味を抱いたからということでしたが、こんな偶然ってある?って。
大袈裟なことを言うようですが、ちょっとゾクゾクっとするような展開でした。何かに導かれているというか、目には見えないご縁の力が動いたのを感じます。