アコースティックライブの面白さ
ユーチューブチャンネルを開設したのも、コロナ禍で活動がストップしたことがきっかけでした。コンサートを一緒につくってきたミュージシャンやスタッフと相談して、歌とピアノ、ギターだけで私の自宅から配信したり、それぞれの自宅をオンラインで繋いだりした「お家でライブ」。これまでにない最小限のアコースティック編成だったのですが、思いがけず幅広い層から「よかった」と言っていただけました。
小編成の面白さに気づけたので、以来、フル編成のコンサートだけでなく、「ピアノ、ベース、サックス、ギター」「ピアノ、バイオリン、チェロ、ギター」の2つのチームをつくってアコースティックライブを各地で開いています。
小さな会場でできるので、あるホールでは「この距離なら、私の生の声が十分聴こえそうですね」と言って、マイクを置いて1曲歌ってみました。いつもと違った歌に、皆さんとても喜んでくださいましたね。
急に「こんなふうに歌いたい」と思えば仲間が合わせてくれるし、誰かが面白いフレーズを加えてくることも。こんな「音楽の会話」もはじめての経験で、いい刺激になったり発見があったりします。
もちろん大きな編成で、演出をきっちり決めたコンサートは素晴らしく、それはひとつの醍醐味ですよね。おかげさまで22年の歌手生活50周年の記念リサイタルでは、客席の最上階のてっぺんまでお客さまが集まってくださって。皆さんを見た瞬間、涙が溢れてしまいました。
まだそのころは人が集まる場所ではマスクが必須だったし、声も出せないので、かわりに力いっぱい拍手をくださった。その拍手と、客席からのエネルギーを、私はずっといただいてきたんだと実感したのです。そのお返し、なんて言い方はおこがましいですが、この先自分にできる歌でお返していきたいと思いました。
今年7月、のど自慢のお仕事で、長崎県の壱岐島へ行きました。タクシーの運転手さんによれば、島の人口の40%が65歳以上の方なんだとか。
きっとここにも私をずっと応援してくださる方がいるはず。でもお年を召した方が、エンターテインメントのためだけに時間を割いて、街中の会場まで船や飛行機に乗って出てらっしゃるのは難しいじゃないですか。
どこまで実現できるかわからないけれど、そういう皆さんのところにも、小編成でお邪魔できたらいいなあ、と考えています。