概要

旬なニュースの当事者を招き、その核心に迫る報道番組「深層NEWS」。読売新聞のベテラン記者で、コメンテーターを務める伊藤俊行編集委員と、元キャスターの吉田清久編集委員が、番組では伝えきれなかったニュースの深層に迫る。

海上自衛隊のインド太平洋方面派遣が今年も始まった。8回目の今回は過去最大規模になる。海自の艦艇がインド太平洋の各国を訪問しながら、二国間や多国間の共同訓練に参加する。海洋の連携を深めることは、なぜ必要なのか。前海上幕僚長の山村浩氏、笹川平和財団上席フェローの小原凡司氏を迎えた5月9日の放送を踏まえて、編集委員2氏が語り合った。

海上自衛隊 広がる連携

望ましい環境を維持する

「顔と顔を合わせて親善訓練や意見交換を行うことで、日本の『友達』を増やしていく。平時有事を問わず、日本にとって望ましい安全保障環境を絶え間なく維持していく」=山村氏

「今回派遣される護衛艦『のしろ』には、無人機を使用して、敵国がまいた機雷を掃海する能力がある。艦内外の情報を戦闘指揮所に集約して対処するシステムも画期的だ」=小原氏

伊藤番組では、4月から5月にかけて、海自の活動を4回にわたり取り上げました。1回〜3回目は潜水艦をめぐる任務を紹介して、4回目がこのインド太平洋方面派遣です。海自には、海外との協働関係を大切にしてきた歴史があります。旧海軍にあった国際感覚が受け継がれていると言っていいでしょう。駐米公使も務めた阿川尚之・慶大名誉教授の『海の友情』(中公新書)を読んでいただければ、そうした伝統がよく分かると思います。派遣を継続する背景には、覇権主義を強める中国に備える狙いがあります。山村さんが「友達作りが大切だ」と強調されるのを聞いて、海自で培われてきた国際感覚を改めて感じました。

海自 インド太平洋方面派遣の狙いは©️日本テレビ

吉田中国は、南シナ海や東シナ海で緊張を高めているだけではありません。海軍をインド洋まで展開させており、東アフリカの要衝ジブチには海外基地を設けています。太平洋島嶼国の取り込みにも力を入れています。自由で開かれたインド太平洋を守るためには、日本は同盟国の米国、準同盟国のオーストラリア、そしてインドとの関係を軸にしながら、中国と対峙しなければなりません。インド太平洋方面派遣を続けることは、日本などと連携できる国を増やすことにつながります。今回は、事実上の空母化に向けて1回目の大規模改修を終えた護衛艦「かが」なども参加します。

伊藤海自をテーマに数回にわたって放送したところ、視聴者にはとても好評でした。護衛艦や潜水艦の機能を細かく紹介するなど、結構専門的な内容で、潜水艦を取り上げた際は、元海自潜水艦隊司令官の矢野一樹さんや、元海自自衛艦隊司令官の香田洋二さんをゲストに招きました。番組スタッフと話したのですが、ロシアのウクライナ侵略以降、安全保障に対する国民の関心は高まっています。日本は海を挟んで、中国、北朝鮮、ロシアと向き合っており、海洋国家として国の安全を守らなければなりません。海の重要性は高まっており、視聴者の「海自の機能や性能を知りたい」との思いも強まっていることを感じた放送でした。