撮影◎高橋ヒデキ ©non-no(岡本あずさ)

新国立劇場公演
かもめ

4月11~29日/東京・新国立劇場 小劇場
作/アントン・チェーホフ 英語台本/トム・ストッパード 
翻訳/小川絵梨子 演出/鈴木裕美 
出演/朝海ひかる、天宮良、伊勢佳世、伊東沙保、岡本あずさ、佐藤正宏、須賀貴匡、高田賢一、俵木藤汰、 中島愛子、松井ショウキ、山﨑秀樹、渡邊りょう
☎03・5352・9999(新国立劇場ボックスオフィス) ※兵庫、愛知公演あり

物語は悲劇か喜劇か

昨年、新国立劇場の演劇芸術監督に就任した小川絵梨子は、毎シーズン最低1作品、フルオーディション公演を実施する方針を打ち出した。出演者をオーディションで決めること自体は珍しくないが、中心キャストはあらかじめ決まっているケースがほとんど。主役も含めたすべての出演者を広く公募して選考するという今回の試みは、公共劇場だからこそ可能なのだろう。

その第1弾に選ばれたのが、チェーホフの不朽の名作『かもめ』。鈴木裕美が演出を担当し、台本は英国演劇界の重鎮トム・ストッパードの英語版で、小川による新訳での上演となる。応募総数3396名の中から6週間のオーディションを経て決まったキャストは、総勢13人。名の通った人も、知名度がまだまだの人もいる。

物語の舞台は、湖畔の邸宅。女優のアルカージナ(朝海ひかる・写真左上)と愛人の小説家トリゴーリン(須賀貴匡・右上)が滞在している。アルカージナの息子トレープレフ(渡邊りょう・右下)は女優志望の恋人ニーナ(岡本あずさ・左下)を主役に自作の実験的な芝居を上演するが、アルカージナに揶揄されて中断する。一方、トリゴーリンに惹かれていくニーナ。モスクワに戻ろうとする彼に、自分もモスクワに出て女優になると伝える。2年後、トレープレフは新進作家として注目を集めていたが、ニーナはトリゴーリンに捨てられ、女優としても芽が出ず、今は地方回りの身だ。ある日、トレープレフの部屋にニーナが現れる。言い争いとなり出て行ったニーナの後を追チうトレープレフ。そして響く銃声......。

チェーホフはこの悲劇を「喜劇」と銘打っている。確かに登場人物たちはかなわぬ想いをもてあまし、滑稽な言動をくり返す。鈴木は「登場人物たちがおかしな行動をしている時の理由は『寂しい』から」と解釈する。トレープレフが自作についてしゃべり続けるのも、トリゴーリンが若いニーナに創作の悩みを延々と語るのも、「寂しくて不安」だから。悲劇ではあるが、登場人物たちの「バカだなぁ」という行動に焦点を当てると、「喜劇」でもあるのだ。「寂しさ」が身につまされながらも、彼らの迷走にくすりと笑える『かもめ』が観られそうだ。ニーナの名台詞「私はかもめ」は、どんなに響くのだろうか。

 

 

シーエイティプロデュース
BLUE/ORANGE

3月29日~4月28日/東京・DDD青山クロスシアター
作/ジョー・ペンホール 翻訳/小川絵梨子 演出/千葉哲也
出演/成河、千葉哲也、章平
☎03・3234・9999(チケットスペース)

ロンドンの精神病院。入院していたアフリカ系の青年クリスは治療を終え、退院を控えていた。しかし研修医のブルースは彼の状態に不安を感じ、退院は危険だと上申する。上司のロバート医師はそれに反対し、ブルースを高圧的になじる。そんなときブルースが器に盛られたオレンジの色を問うと、クリスは「青」と答えた......。

3人の会話はしだいに、権力とエゴ、人種的偏見をめぐるバトルの様相を呈していく。イギリスで大きな反響を呼び、日本では2010年に初演された現代劇の傑作が、9年ぶりに再演される。初演でクリス役だった成河がブルースを、ブルース役だった千葉哲也がロバートを演じ、クリスには章平が入る。

 

 

オフィスコットーネプロデュース
改訂版 埒もなく汚れなく 

5月9~19日/東京・シアター711
作・演出/瀬戸山美咲
出演/西尾友樹(劇団チョコレートケーキ)、占部房子、柿丸美智恵、緒方晋(TheStoneAge)、福本伸一(ラッパ屋)、橋爪未萠里(劇団赤鬼)、照井健仁
☎03・3411・4081(オフィスコットーネ) ※伊丹公演あり

2009年、不慮の事故により48歳で亡くなった劇作家・大竹野正典。家庭を持ち、会社に勤めながら、数々の作品を創り続けた。その大竹野の人生を描いた瀬戸山美咲の作品が、大幅に改訂されて上演される。16年の初演では家族との関係に重点が置かれていたが、今回は遺作『山の声』を創り上げるまでの軌跡にも焦点を当て、演劇に憑かれた大竹野自身と、同作のモデルで山に憑かれた登山家・加藤文太郎の生き様を重ねて描く。「人は死を賭けてまで何故、山に挑み続けるのか」。この問いかけはやがて「人は何故、生きるのか」という普遍的なテーマに繫がっていく。『山の声』も同時上演。