バカと言われましても

他の家庭では免許返納問題をどうしているのだろうかと、同年代の友人に聞く。

まずは都内の友人たちの話。

「ウチの親父は免許返納に関して、全く聞く耳を持ってくれない。自分は事故をしないの一点張りでさ。仕方ないから、母親に代わりに免許返納の期限期日を入れた念書にサイン・代筆してもらったけど、無理だろうなあ」

「免許返納を弟が父親に言い出したら、取っ組み合いのケンカになっちゃったよ……。でもさ、自分が乗っていても思うけど、車は便利だから……。今さら父親が電車に乗れない気持ちも分かる」

一方で地元に戻るとまた感覚が変わってくる。同年代の友人たちも「(車がなかったら)生きていけないもんね」と、高齢者の運転に対して疑問を持たない、見て見ぬふりが多い。話題にさえしてもらえなかった。

今年の帰省時、私も父親に免許を返納してほしいと話した。彼は昭和19年生まれを絵に描いたような、全く融通の効かない高齢者。もうすぐ傘寿を迎える。

「別に自損事故で親父が死ぬなら仕方ないけれど、もし誰かの命を奪ったらどうするの? その後始末をするのは子どもなんだから。免許を返納すればタクシーの割引もあるし、移動はできるじゃない」

「うるさい! 俺は事故なんかしない! 免許は絶対に返しません。あっち行けバカ!」

(は? 「あっち行けバカ」とは? 今時、小学生だって使わないような言葉を娘に向かって吐く……?)

(写真はイメージ。写真提供:photoAC)

免許返納の話題よりも先に、父親とは全く会話が成立しないという事実が発覚。結局、言い合いになって終わった。帰省してもさしたる会話をすることもなく、10年以上が経過していたことに気づく。私が目撃した運転に対する慢心ぶりでは、免許返納もそう簡単に受け入れることもないだろう。「雨垂れ石を穿つ」の精神で、何度か話し合いを重ねようとした決意も見事に玉砕。終わった。