(写真はイメージ。写真提供:photoAC)

国よ、取り上げてくれ

いっそのこと、勝手に父親の車を売ってやろうかとも考えたが、売ったところで小銭持ちの父はまた車を買う。では行政の対応はどうなっているのかと、地元の免許センターに問い合わせてみた。

「基本的にご本人の意思で返納をしてもらっているので、強制的に私たちが免許を取り上げることのできるシステムはありません。要介護1〜2とか、認知症の疑いがある場合、それから身体機能に不具合があった場合は、警察や免許センターで確認をして、返納してもらうこともあるんですけど。いずれにしてもお医者さんの診断書は必要になってしまうんです」

いずれのケースにも父親は当てはまらなかった。

高齢者ドライバー増加の背景には、地方の過疎化はもちろん、公共交通機関を動かす人手不足などがある。首都一極集中型になってしまったことも、原因の一つだ。これはどうしたものだろうか。

ここまでの一連は父親に対する子どもからの意地悪でも何でもなく、平穏に余生を過ごしてほしいという愛情なのだが、国は認めてくれないらしい。政治や選挙に興味はないけれど「80歳免許強制返納制度」を掲げてくれる候補者がいたら、一票、投じてしまいそうだ。