阿刀田高
阿刀田高さん(c)新潮社
1月に91歳を迎えた作家の阿刀田高さんは、妻・慶子さん(2025年5月逝去)が介護施設に入所した2023年から一人暮らしを始め、現在も「“まあまあ”でいいじゃないか」をモットーに軽やかな日々を過ごしています。そこで今回は、阿刀田さんの2025年の著書『90歳、男のひとり暮らし』から一部を抜粋し、お届けします。

税金とのつきあい ――お金

税金については恨みも嫌悪もない。あえて言えば少し親しむところがあったりする。

それと言うのは作家という仕事は……いや、いや、他人様のことはわからない、私の場合は収入の100パーセントが原稿料、印税、講演料などで、もともと10パーセント(一度に100万円を越えると20パーセント)が源泉税として引かれて支払われるので、預金通帳に印字された数字が自分の稼ぎであり、ことさらに税金を納入するという意識が薄い。私くらいの稼ぎだと、この源泉税でおおむね公への支払いは賄えてしまう。

そればかりか私の場合は収入に年ごとの差が大きい。たくさん稼ぐ年と少ない年とがある。たくさん稼げばそれだけ税金を多く払わねばならないし、少なければその逆だ。かくて税金を多く払う年は収入が多いのだ。払う税金がゼロなら収入も極端に少ないのだ。

――こんなに税金を取られるのか――

と思うときは、

――今年は印税が多かったもんなあ――

と嬉しいときなのだ。

もともと税金は“仕方がない”とあきらめているし、いま述べた事情もあって憎くはない。

それに、もう一つ、若いころ救急車に同乗した。

――いざというとき、こんな入念のサービスを無料で受けられるのか――

目の当たりに実感して、

――これも税金のおかげだ――

単純に、いや、いや根本的に納得した。お人好しのところがあるのだ。