お礼が自然に
「この3人が馴れ合うのではなく、敬語を使っていることがいいんですよね。あと気がつくと、普通の友達よりもお礼を言い合っている回数が多いんです」
私の発言に2人は「ああ〜」と納得の声を上げた。
仲良きことは美しきことではあるけれど、時には負担だ。だんだん互いのキャラクターがわかってくると、グループ内での役割分担が自然と決まっていく。ちなみに私の場合、数人のグループでいると、たいがい幹事を任される。雑誌の編集部員だった経験があると、香盤表(スケジュール)を作るのも、大人数を動かすのはお手のもの。特に意識はしないでその役を遂行していた。
が、30代後半になってそれが苦痛だと気づく。仕事なら原稿料をもらって動くが、プライベートまでは疲れる。そんなわけで40代からは、幹事役への進取を撤退。ただ私がしなくてもグループはちゃんと動いている。動かなければ、それまでの関係だったと言うことだ。ただこの3人に関しては、まだ付き合いも浅いし、私からお誘いをした。その都度、
「セッテイング、ありがとうございます」
お礼を言われる。久々に飲み会のシチュエーションで聞く、幹事への労いに一言。聞いた瞬間、なんだか胸がスッとしたのを覚えている。
「次回は私が店を探しますね」
自然と幹事を順番にしてくれるのも、今まであまりなかったと思い出す。いや、私は他のメンバーの仕切りがうまく進んでいないのを見ると、自分から手を出す節もあった。結局、自分で自分の首を絞めていたのかもしれないと、この関係性を眺めながら感じた。仕切り屋ってヤツはもう。