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学生時代から国際支援を夢見た山田雪乃さんはシンクタンクを経て、投資家に向けた市場分析を手がけるようになった。確かなデータをもとにその国の魅力を伝え、資金の流れを変えていく。そんな支援の仕方もあることを、国際大学での学びで得たという

考え方や生き方の多様性も必要

現在、私は大和証券でストラテジスト(経済環境の分析を通じて投資に関する戦略を立てる)として働いています。これまでにオーストラリアやアジア、新興国などを担当。投資情報部長の職に就いてからは、お客様である投資家に向けて市場を調査分析したレポートを提供するほか、会社の公式ユーチューブチャンネルで相場の解説も行っています。

2015年の国連総会をきっかけに注目されたSDGs(持続可能な開発目標)。その実現に向けた道筋のひとつとして、投資の世界でも企業の長期成長に大切な「環境=Environmental」「社会=Social」「企業管理=Governance」という3つの観点(ESG)が重要視されるようになりました。ESGに配慮のない企業は、大量の資金を運用する機関投資家から「成長にリスクを抱えている」とみなされるようになってきているのです。

学生時代、国連で働く夢を持っていたこともあり、SDGsやESGの考えに接したときは「これだ!」という手応えを感じましたね。ESG担当のストラテジストになってからは、日本企業のダイバーシティ(多様性)を分析しました。

多様性は、企業を強くします。グローバルな市場では、海外からの働き手の視点がますます求められるでしょう。ただ私は性別や国籍の多様性だけでなく、考え方や生き方の多様性も必要だと思っています。たとえば出産や子育てのため家庭に入った女性の経験や視点も多様性のひとつ。これらを生かそうとする志向は、今後ますます高まってほしいですね。そのためにも、執行役員や社内取締役といった役員クラスでも多様性を確保していくことが急務だと考えています。

私が、新潟県南魚沼市にある国際大学の存在を知ったのは、新興国の農業開発について研究していた大学生のときでした。国連などの国際機関で働くことで発展途上地域の支援に繋げたい。それには英語力が必須ですが、当時の私に海外留学はハードルが高くて。そんなとき、ある先生から「日本にいながら英語だけで学べて、修士の学位もとれる大学院大学がある」と勧められたのが国際大学だったのです。

9月の入学前に日本人向けのプログラムを1ヵ月受けたので、「授業も教科書も英語」という環境に、さほど苦労せず馴染むことができました。それに専攻した国際経済学が主に扱うのはデータや数式。難しい単語は少なめでもあります。

JICA(国際協力機構)の方から、発展途上地域の支援プログラムをどう運営しているかを教えていただくなど、地に足のついた学びも多くありました。「住民の意見に耳を傾けた開発計画」が注目されるようになった時期でもあり、単なるインフラ整備にとどまらない最新の取り組みを学べたのは、貴重な経験だったと思います。