パソコン講座では、『スコーレ通信』の作成を最終目標に取り組む

「ちょうどその頃、友人の吉本さんに得意料理を振る舞う機会がありました。美味しいと喜ぶ顔を見ていたら、充実感が漲ってきたのです。その気持ちを漏らすと、吉本さんたちが『料理講座をやれば?』って。どうせならご近所さんに声をかけ、みんなが趣味を持ち寄れば楽しい組織になるかもしれない。まずは私の料理講座から、とスタートすることにしました」

午前11時、メンバーの植野さん宅で開催されているパソコン講座を訪ねてみると、60~80代の女性たちが雑談を一切せず、講師から真剣にパソコン操作を教わっていた。講座が終わると、植野さん手作りのビーフカレーと彩り豊かなサラダがテーブルに並び、ランチタイムへ。さっきの静けさが嘘のように、話に花が咲き始める。

「お茶会やランチ会では本音で語り合い、臭いものに蓋をせず、ドロドロした悩みもぶちまけます。すると、必ず誰かが世話を焼いてくれますから。自宅開放が心もさらけ出す要因になっているのかな。みんなすごく素直なんです(笑)」と、利安さん。

当然、家族の職業も公開し合っている。医師、税理士、電器店、建設業、学者など多種多様で、ひとつの社会のようだ。

「高齢者は、やれ詐欺被害だ、介護だ、病気だって問題が起きがちでしょ?でも、『グループ・スコーレ』にはいろんな人がいるから、仲間内で協力したり、知恵を出し合えて安心。老後には家族以外のこうしたネットワークが絶対に必要よ」と、利安さんが言うと、「その通り!」と、同意の声が響いた。

「不謹慎かもしれないけれど、夫が末期がんで集中治療室に入った時も講座に参加していました。病院にいても何もできないし、気が滅入るだけだから。みんなのパワーが私の元気の源なの」とMさん(80歳)が語れば、「トールペイントの講師をしていた人が認知症になったけど、私たち生徒はいつもの講座の時間に変わらずお邪魔します。少しでも見守りたいですから。ここの人間はおせっかいなんです」とTさん(83歳)。

次々に、繋がりの深さを感じさせるエピソードが飛び出してくる。