東京で方言を話せる人、話せない人

久保 私が初めて「いいとも」に出たときに、東京で関西弁を話す人をディスるネタをやったんですよ。自分が長崎出身だから、「九州の人間は上京しても方言出さないのに、なんで大阪の人って自分の我を通すの?」みたいな感じで。でも今日みたいにハスキーなおばちゃんと関西弁でトークしてたら、「あのとき、あんな言い方してごめん!」って思っちゃった。東京に来て関西弁をしゃべる人の気持ち、ちょっとわかったんですよ。

ヒャダ あ、わかったんですか?

久保 (関西弁っぽく)東京でうまく呼吸ができへんかったんやな。やっぱり自分らしい息の仕方がわからんくなるから、東京弁じゃなくて関西弁でいこうってみんな思ったんじゃないのかなって。

ヒャダ そうだと思いますよ。東京の言葉だと、間が合わないんでしょうね。

久保 そう、たぶん呼吸の問題だと思うんだよね。……というのを今さら思って、「あのときはほんまごめん!」って。そして私の関西弁は相変わらず上手くない(笑)。

能町 久保さん、関西弁しゃべってるうちにだんだん佐世保弁になっていくからね。

ヒャダ 久保さんの関西弁、マジで20点くらいっす(笑)。

一同 (笑)

ヒャダ 能町さんの関西弁は、80点から85点くらいなんですよ。

能町 大学時代に、京都のお寺の子がいたんですよ。もう京都弁100パーな感じの。でも本人は別に「絶対に京都弁で通す」と意識してるわけじゃなく、普通にしゃべってたらどうしても京都弁になっちゃうらしくて。

久保 やっぱ呼吸なんだよね。

能町 イントネーションも、関東の人が言うのと全然違うんですよ。たとえば「ラス2」だと、途中が上がって、「ラス(⤴︎)2」になる。

ヒャダ そうそう。「なす(⤴︎)び」もそうですね。

能町 そんな感じの、めちゃくちゃはんなりした京都の男の子だったんですけど、4年生のときに久しぶりに会ったら、完全に関東弁に染まっちゃってて。普通に標準語っぽいしゃべりで、「え、全然もう普通だけど?」みたいな感じになってて。それはけっこう寂しかったな。

ヒャダ それは寂しいですねえ。

久保 しかし九州の人間は、なんで東京で九州弁が出ないのか。「九州弁を話さないと呼吸ができない」みたいな感じは別にないからかな。相手もその方言を話してないと、こちらも出せない感じがある。

ヒャダ 関西弁もそれはありますけどね。受け手がいないとキャッチボールができないから。

能町 今日のマッキーだって、普段は標準語ですからね。

ヒャダ 関西に比べて九州のほうが訛りが薄い、ということでもないんですよね。こないだ福岡行ったら、やっぱ訛りがすごいと思って。みんな、すっごいちゃっちゃ言うんですね。

久保 みんなちゃっちゃ言うよ。

ヒャダ 隙間があれば「ちゃ」を入れるくらいの感じなんですよ。

能町 隙間があれば「ちゃ」(笑)。

ヒャダ わざとじゃなくて、みんな自然に言ってる感じなんです。でも関東ではほとんど聞かないから、そこは意識して抑えてるんだろうなと思いました。

能町 そうでしょうね。東北人の場合は東北弁をちょっと恥ずかしいと思ってるから、東京に出たら必死で標準語を頑張るという人が大半みたいです。

──その流れでいくと、関西の人が東京でも関西弁をしゃべり続けるのって、関西を別に田舎だと思ってないからじゃないかと。だから恥ずかしいという感覚が全然ないというか。

能町 ああ〜、それはある。

──「もともと都(みやこ)はこっちだったんだから」みたいな。

久保 それで言うと、九州は自分のところが中央という感じはないから、端っこという自覚を持って生きてる気がする。

──大阪に住んでた頃、ローカルのトーク番組を見てたら、「東京はこうやけど大阪はこうや」という比較文化論みたいな話をやたらしてる印象がありました。

ヒャダ やすとも(海原やすよ ともこ)さんの漫才もそうですね。「東京の女はこうやけど、大阪の女はこうやわ」みたいな。

(2024年6月30日のこじらせライブより)