専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、経済ジャーナリストの荻原博子さんが、「火災保険詐欺」を解説します。

ターゲットは被災者。甘い言葉には乗らないで!

2019年9〜10月に日本列島を襲った台風で、多くの地域が被害を受けました。以前、このコラムで「自然災害での被害は火災保険で補償される」と書きましたね。ところが、これを逆手に取った「火災保険詐欺」が被災地で横行していたのです。

代表的な手口を紹介しましょう。詐欺犯は修理業者を名乗り、被害に遭った家庭を訪問し「火災保険を使って、無料で住宅の修繕をしませんか?」と持ちかけます。家が破損して途方に暮れていた人にとっては、心強い申し出に思えることでしょう。

そこで「よろしくお願いします」というと、業者は「この際、古くなった屋根も保険で直しませんか」などと提案し、見積金額が吊り上がる。さらに、保険会社との交渉に必要だからと、「請求手続代行契約」や「申請サポート契約」なども結ばされます。

たしかに風水害などの被害では「火災保険」が適用されるものの、老朽化した家屋の修繕費用までは補償されません。後日、「保険が適用されなかった」と詐欺業者は高額を請求してきます。そこで修理を断ろうとしても、「もう契約済みです。50%のキャンセル料を払ってください」と、法外な金額をふっかけてくるケースが多発しています。

火災保険を使って修繕したければ、直接保険会社に電話すればいいのです。すぐに対応してくれますし、手数料も取られません。

国民生活センターによると、災害修繕のトラブル相談はここ10年で約30倍に増加。被害者の半数が60歳以上だそうです。みなさん、甘い言葉にはくれぐれも気をつけましょうね。