親にも本音と建前がある

私はよく、子どもが自分を犠牲にしてまで親の介護を担わなくてもいいと言います。相続もそれと同じ。子どもたちへ平等に譲らなければならないルールはないのです。スピリチュアルな視点で見れば、家族はともに学ぶ仲間。成人したなら、それぞれが自立・自律した関係がベストです。その真理が理解できず、親が説明した後に、相続放棄を迫られた子どもが実家に寄りつかない、疎遠になるなどということも考えられます。そうなっても親はしかるべきと覚悟するしかありません。

ここで一つ考えたいのは、親にとって相続させたい子、させたくない子の差について。その理由は、本当に「日頃から世話になっているか否か」の違いだけなのでしょうか。「財産は長男に継がせるべし」という古い因習に囚われている場合や、実は「この子のほうがかわいい」と思っていることもあるのでは。相続の配分についてキチンと説明ができないのは、どこかやましい気持ちが潜んでいるからです。本音と建前が親にあって、そこを悟られたくないからだと自覚しましょう。

 

(イラスト◎大野舞)