障害や病を持った子どもを授かったとき
本書は『読売新聞』の医療・健康・介護サイト「ヨミドクター」で1億900万PVを記録した大人気連載の完全収録。著者は小児外科医。椎名林檎がこの連載の熱心な読者で、某テレビ番組にて絶賛していた。
それは障害や病を持った子どもを授かったとき「あなたは、その現実を受け入れることができますか?」の問いかけからはじまる。親や家族、医療従事者たちはどのように考え、悩み、向き合っていったか。その現実を受け入れることの難しさを、著者の臨床体験からいくつかの例を挙げて綴る。
例えば、腹壁破裂と両手足の指が6本ずつあるという障害を持って生まれた赤ちゃんの場合。腹壁破裂の手術は成功したものの、家族は指のことを受け入れることができない。形成外科手術できると医師が言っても頑なだ。とうとう父親が「人工呼吸器からはずしてください」と頭を下げてくる。しかし医師たちの根気強い説得と治療、なにより、赤ちゃんが必死で生きようとしている姿を見て、親たちは少しずつ「受容」していく。
一方、わが子の障害を最後まで受け入れられず、結果亡くなってしまう子どもがいる。またあまりの障害の重さに治療を迷う医師もいる。この医師の苦悩の章は、知る機会がなかっただけに深く印象に残った。そして「出生前診断で命を選ぶのは正しいのでしょうか?」と続く。
命は選別されるべきではない、と頭ではわかっていても「自分だったら」という問いが渦巻き、命の尊厳や定義、医療の進歩についても考えさせられる。とことん考え、医師と一緒に苦悩し、絶望と拒絶と葛藤の果てに見えてくる「受容」の光景──自分なりの「答え」へと導いてくれる良書である。
『いのちは輝く-わが子の障害を受け入れるとき』
著◎松永正訓
中央公論新社 1600円
著◎松永正訓
中央公論新社 1600円