施設にいた頃は母親を憎んでいたという常田さん。しかし、自身が結婚し子どもができると、そんな気持ちもおさまってきた。
「当時小学生だった息子が『お祖母ちゃんに会いたい』と言うので、母の居場所を捜して会ったんです。その時に私が、実は施設にいたという話をしたら、『知ってた』と。じゃあ、どうして一度も会いにこなかったんだろうと思いましたが、聞けませんでした。それに久しぶりなのに、母は自分の話ばかり。お父さんがどれほどひどかったかとか、今は仕事がどんなに大変かとか。『置いて行ってごめん』という言葉は最後までなかった」
その後、母親とは数回会ったが、些細なことで口論になり、現在に至るまで音信不通だ。
「今は恨みも怒りも特にありません。でも、老後の面倒をみてほしいと言われたら断ります。産んでもらったけど、育ててもらった覚えはないので」
たまたま知った家族代行サービスには相談だけした。将来何かあれば委託するかもしれないが、このまま縁が切れても構わないというのが本音だ。
LMNの遠藤さんは、「最近は、どうすれば親と縁を切れるかという相談をよく受けます。いわゆる《家族じまい》ですね。子の依頼を受けて親側に連絡すると、本人も身に覚えがあるからか、大抵すんなり受け入れられます」と語る。
家族だからといって必ずしも関係が良好なわけではない。そんな時に相談できたり、世話を頼めたりする場所やシステムがあることは、これからの時代、より必要になっていくのかもしれない。