それもまた人生の果実

久保 振り返って見ると、「自分の属性から離れたい」という気持ちが自分の根底にはあったんだなと思う。でもそれを自分の(新しい)属性にしたいというところまではいかないという。

──今までの自分の属性から離れて、新しい体験をしたいけど、それが自分の新しい属性になるほどにはハマれていないということ?

久保 そうそう。2024年は相撲を見始めて、「timelesz project」(*)も見てて、(以前からの趣味である)将棋も見てたんですけど、どれも自分の属性として語れるほどの趣味じゃないなって。たとえば将棋の柄のハンカチを買うとき、「いや、私はこれを買う資格が本当にあるのか……!?」とか思っちゃうわけですよ。

*Netflixで配信中のオーディション番組。

──えっ、それはあるでしょう。

久保 全然聞いてないヘビメタバンドのTシャツだったら、たぶん買えるんですよ。でも自分の属性から離れて新しくハマった趣味だと、「私そこまで詳しく語れないし」みたいな意識が芽生えてくる。いろいろハマったものはあったけれども、属性まで昇華していないというのが、最近の悩みかな。

──属性ってどういうことですか?

久保 もっと自分が自信を持って、「自分の何かの部分を構成してる根幹はこれだ」と言えるような……。たとえば私、「九州の女」というのは自分の属性だと思ってます。あと海と山でいうと、私は圧倒的に「海の人間」だなと思う。そういう風に思える何か。

──アイデンティティに関わるレベルのやつ?

久保 アイデンティティに関わるレベルの何かが本当は欲しいんだと思う。

能町 もう1個、欲しいってことですか?

久保 そう。私、洋画が好きで、クリストファー・ノーランの作品が上映されたら必ずIMAXで見るんですよ。でも私が洋画を好きで見てるのって、自分の属性から離れられるからなんですよ。だから洋画は私のアイデンティティを担ってるものではない。そういうことを最近はよく考えるようになっちゃって。

一同 へえー……。

──そんなに気にしてるってことは、アイデンティティに関わるレベルの属性はもう長年更新されてないとか?

久保 そうだ……そうです!

能町 でもみんなそうじゃないですか? 40代で新しくアイデンティティに関わるレベルでハマる趣味が急にできるのって、けっこう珍しい気がします。

──「犬が好き」というのは属性じゃない?

久保 犬はもう自分と切り離せないところまで来ていて、だいぶアイデンティティに関わっているとは思うんですけど、いざ犬柄の服を買おうとするときに、「いや、自分はまだ属性にできていないんじゃないか」って……。

能町 「その服を着る」が基準なんですね(笑)。じゃあ久保さん、「九州」って書いてある服なら大丈夫なの?

一同 (笑)

ヒャダ 「佐世保」(笑)。

──「I♡佐世保」(笑)。

久保 着ないね(笑)。

能町 私も「相撲」って書いてあるトレーナーあんまり着ないな(笑)。でも持ってはいる。

久保 アイデンティティに関わるもので言うと、過去にはガッツリ関わっていたのに、もうずっとそれに触れてなくて、後ろめたさを感じることもあって。

能町 そういうのは私もあるかな。

久保 人付き合いも、そういうところがあるんですよ。「昔、仲良くしてた人たちともう会わなくなった」ということはすごくあって。そういうとき、私は自分から連絡を取らないんですよ。ずっと仲良くし続けるのって難しい。

能町 それは難しいですよ。

久保 だから今は仲良くできてる人に対しても、いつか丸ごと連絡取らなくなるきっかけが来るんじゃないか……という怖さがチラつくというのはありますね。

──僕の印象では、久保さんは何かにハマるときのスピードがめちゃくちゃ速いんですよ。人間関係でも、それと同じようなことがあるってことですか? 急激に仲良くなるけど、いつしかその熱が冷めて、だんだん離れてしまうみたいな。

久保 あります。関係をずっと持続することができない。それは私が冷たい人間だという部分もあるのかもしれないけど。別に向こうに冷たくされるわけでもないんですよ。むしろ向こうから連絡してくれるのに、私がそれを無視しちゃったり。でも2024年は、長く連絡を取ってなかった人と急に連絡を取って、久しぶりに会うというのがすごく多かった。今はずっと連絡取ってなかった人と会うバイブスが来てます。

──ずっと連絡を取っていない気まずさはあったとしても、そういう人と久しぶりに連絡を取って会うというのもまた、人生の果実じゃないですか?

久保 人生の果実!

能町 いい表現。

久保 ライフフルーツ。

ヒャダ なんで英語にしたんすか(笑)。

一同 (笑)

ヒャダ しかもそれを言うなら、フルーツ・オブ・ライフじゃないですか。

久保 浅はかな人間でごめん……(笑)。

能町 でもライフフルーツ、たしかにありますよ。久しぶりに会っても意外とどうにかなったりするんですよね。

久保 プロファイリング、ありがとうございます。

──2025年も、ここで吐き出せるものがあればいくらでも吐き出してください。

ヒャダ そうですそうです。

久保 ああ、たんつぼ?

一同 (爆笑)

ヒャダ なんてことを言うんですか!

能町 人生のたんつぼ(笑)。

久保 ごめんなさい(笑)、ごめんなさい〜(泣)。

久保ミツロウ・能町みね子・ヒャダイン
(2024年12月21日のこじらせライブより)

【書籍情報】

「久保みねヒャダこじらせブロス」時代の連載が書籍化!

(通常版はこちら↓)

久保ミツロウ・能町みね子・ヒャダイン
カウンセリングするつもりじゃなかった~久保みねヒャダこじらせ雑談~」(扶桑社)

通常版:2,200円

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きっと誰かに話したくなるネタが詰まった一冊です。


【ライブ情報】

有観客ライブ&オンライン配信での開催
『久保みねヒャダこじらせライブ』

開催日:2025年2月1日(土)
会場:お台場特設会場(フジテレビ湾岸スタジオ内)
昼公演 12:00開演/夜公演 16:00開演
昼公演:【ゲスト】爆笑問題・田中裕二(オンライン配信なし)
夜公演:【ゲスト】上垣皓太朗アナウンサー(オンライン配信なし)

Livepocketにて昼公演夜公演の有観客チケットを販売中。


【番組情報】

ほぼ隔週で放送中
『久保みねヒャダこじらせナイト』

次回放送:2月1日(土)フジテレビ●深1:45〜2:15
*FODプレミアムでこれまでのライブ(FOD限定トークあり)と番組アーカイブを配信中。