左から、森田敦子さん、山本浩未さん(撮影:目黒智子)
みなさん、「デリケートゾーン」のケアはしていますか? 排泄や性交渉のほか、女性の場合は月経や妊娠・出産にも関わる、体の中でとても大切なところでもあります。実は、刺激に弱く乾燥しやすく、見た目も機能も老化するデリケートゾーンこそ、いたわることが重要なのです。植物療法士の森田敦子さんに教えてもらいましょう(撮影=目黒智子(人物)、ジョン・チャン(商品)ヘアメイク=佐藤美香 文・構成=片岡えり)

オムツ使用時や子宮脱のダメージを防ぐために

山本 森田さんはデリケートゾーンのケアが必要だと提唱し続けていますよね。

森田 はい。数年前までは、トークショーなどで話したいというと、担当者に眉をひそめられて。下ネタのように思われていたのです。当時に比べると、今は認知度が上がってきたと感じます。

山本 ケアの重要性を訴えたい、と思ったきっかけは?

森田 植物療法士である私は、22年前から高齢者介護に力を注いでいます。その現場で目にした、寝たきりのご婦人のオムツの中が、あまりにも哀しい状態で……。アンダーヘアに糞尿がこびりつき、それを介護士が熱いタオルで拭き取るのですが、毛が絡み皮膚はこすれ、肌や粘膜が乾燥して赤くなりピリピリと切れるのです。

山本 ああ、想像できます。

森田 その状態でまたオムツを穿かされるわけですから、痛みもあるでしょう。恥ずかしいし、自尊心もボロボロ。すべてを忘れたいという自己防衛本能が働くのか、認知症が進行する方も多くいました。また、75歳以上の女性の約4人に1人が子宮脱といわれています。私の母もそうでした。

山本 子宮脱、初めて聞きました。

森田 日本はデリケートゾーンの話をするのはタブーという風潮があるので、誰にも言わず我慢してしまう。トラブルを抱え一人で悩んでいる女性は潜在的にとても多いと感じます。

山本 森田さんが植物療法を学んだフランスは違うのですか?

森田 フランスは何歳になっても「女」であり続ける国ですから。オムツを穿くのは死の前の2週間くらいだけで、50代から尿モレシートを使うなんてありえません。尿モレが気になったら骨盤底筋を鍛えるし、乾燥させないよう腟まわりの保湿もします。フランスに限らず、欧米ではアンダーヘアの処理は当たり前で、デリケートゾーンのお手入れもしやすいのです。

山本 その価値観の差は大きいですね。私も遅ればせながらレーザー脱毛をしました。アンダーヘアがないと皮膚が確認できるので、保湿の必要性を感じます。

森田 でしょう! アンダーヘアがないほうが清潔だし、摩擦も減るし、処理したほうがいいと思うんです。将来介護される側になるときのことを考えても。

<解説>
・デリケートゾーン
腟、尿道口、肛門と小陰唇、大陰唇表面の皮膚、アンダーヘアが生えている恥丘部分までのこと。日本では陰部、恥部と呼ばれることが多い。皮膚が薄く粘膜もある、体の中でもっとも繊細で刺激を受けやすい部分


・子宮脱
骨盤臓器脱の一種。出産や加齢、閉経により骨盤底筋が緩み、下垂した子宮を支えきれなくなって、腟から体外に子宮が出てしまう病気。子宮を取る手術などで治療可能。腹圧がかかりやすい農業従事者などに多い


・骨盤底筋
骨盤の下にあるハンモック状の筋肉群。女性の子宮や膀胱、直腸などお腹の臓器を下から支えている。安全な妊娠・出産、尿を止める、腟を締めるときにも使う筋肉で、尿モレや子宮脱などの予防に不可欠


・アンダーヘアの処理
欧米では男女とも常識。手軽なのは「ブラジリアンワックス」というワックス脱毛。現在の永久脱毛は、毛周期にあわせてレーザーを当て脱毛する方法が主流。黒色に反応するため白髪には効かないのが難点