他人を尊重するクセをつけてみる

いずれも常に取り繕った状態ということは、いわば「作られた自分」ということ。周りから好かれ、ほめられたとしても自己肯定感が高まるわけではありません。

かといって、よく言われる「自分の好きなところを10個見つける」「ポジティブワードを使いましょう」といった方法はおすすめしたくない。誰でも、短所やネガティブな感情はあるもの。それを含めた自分を受け入れることが大事だからです。

家族や友人に本当の自分をさらけ出して、受け入れてもらえれば自己肯定感は高まりますが、今まで取り繕い続けてきた人にとって自分を出すことはハードルが高い。また、本音を聞いてくれる相手がいない場合もあるでしょう。そこで私が推奨しているのが、「他人をありのまま受け入れ、リスペクトする」という訓練です。

リスペクトには「尊敬」と「尊重」という意味がありますが、ここでは「尊重」を選ぶことがポイント。なぜなら、「あの人は(頭がいいから)『尊敬』する」などと条件がついてしまうと、「ありのまま」ではなくなってしまうからです。

一方で「尊重」は、相手の優れている部分を見つけられなくても、無条件にリスペクトすることができます。というのも、世のすべての人は、性質、能力、育った環境、経験が違うなかで、自分のベストを尽くしているものだから。それを想像すれば、相手への認識が変わり、リスペクトすることができるはずです。

こうして他人を尊重するクセをつけると、自然と自分自身も尊重でき、寛容になり、自己肯定感が少しずつ高まっていくようになります。「私は何をやっても続かない」と決めつけ、自分を責めてばかりいたとしても、続かなかった理由はさまざまで、必ずしも自分のせいではありません。「あのとき膝をケガしたからテニスをやめたんだ。大変だったよね」と自分をねぎらい、認める思考に変えていくことが大切なのです。

そして、自分が“気持ちいい”と感じる時間を増やすこともポイント。好きな曲を聴く、畑で野菜を育てる、何かの勉強をする……。こうした時間を確保できれば、人間関係でイヤなことがあっても気持ちを切り替えられ、自分を否定せずに済みます。これまでは誘いやお願いを断れずにいた人も、「今日はゴロゴロしていたい」という自分の本心に従った行動ができるようになるのです。