イラスト:クボ桂汰
人と人の付き合いには、自然とパワーバランスが生まれるもの。なぜあなたは、いつも「用事を押し付けられる側」「我慢する側」になってしまうのか。その原因は自己肯定感の低さにあると、精神科医の水島広子さんは指摘します。(構成=村瀬素子 イラスト=クボ桂汰)

一見“いい人”だけど対人関係がうまくいかない

人の意見に合わせてしまう、私の役目だから仕方ないと自分のことを後回しにする、誰にも認めてもらえていないと感じる──。こういった気持ちの動きに心当たりのある方は、自己肯定感が低い可能性があります。

最近よく耳にするようになった「自己肯定感」という言葉ですが、「私は母親としてこんなに素晴らしい」「こんな大企業で働いている私は優れている」というような、自身の能力や実績を誇りに思い、「自分を肯定すること」ではありません。

わかりやすく言うと、妻や母などの役割を演じている自分ではなく、“ありのままの自分”を受け入れて自分を大切にする気持ちのこと。自己肯定感があれば、周囲に振り回されず、心地よい人間関係が築けるようになります。

自己肯定感の低さは、幼少期に親や他人から認められなかった経験とがりやすいと考えられています。そういう人は、「こんな自分はダメだ」「どうせ〇〇ができない」などと考え、「自分は他人よりも価値が低い」という心理が働きがち。そのため、やりたいことがあっても、「主張したら相手に嫌われる」「私にはそんなことを言う権利がない」と無意識のうちに自分を抑え、偽り、相手を優先してしまうのです。

一見“いい人”そうですが、本音で語らないので、周りから「よくわからない人」と思われていることも。抑えすぎて我慢の限界に達したときに突然キレてしまうこともあるため、対人関係がうまくいかないケースも多くあります。

このほかにも、自己肯定感の低い人にはいろいろなタイプがあります。意外かもしれませんが、がんばりすぎる人もそう。たとえば仕事において責任感が強く、心身がきつくても無理をしてしまう人は、「周りの期待に応えたい」と他人基準で行動しており、実は自分を大切にしていないのです。

「私は人よりたくさん働いてようやく存在を認められる」という心理が潜んでいることも。また、「長女の私が親の介護をすべき」など、「べき」を基準にして自分の行動を縛ってしまうケースもよく見られます。

プライドの高い、上から目線の人や攻撃的な人も、自己肯定感が高いわけではありません。心の奥深くに弱くて自信のない自分がいるため、「弱い私を見せると侮られる」という思いから鎧をまとい、他人に対して強く振る舞ってしまうのです。

 

自己肯定感が低い人の特徴