お笑いの仕事だけでなく、俳優・エッセイストとしても忙しい毎日を送る青木さん。この春『Nスタ』ゲストコメンテーターを務めることも決まりました。今回は「スーツケースを置き去りにした人として」を綴ります。
スーツケースがない
羽田空港に車で到着した。1泊で北海道へ講演旅行にいくためだ。
駐車場の混み具合も事前に確認し、しかし諸々手間取るかもしれないからと100分前に到着の予定。ANAは第二ターミナルだと事前確認。
空港で食べようとおにぎりも作り、部屋を片付け、猫に挨拶し、ゴミは捨て、観葉植物に水をやり、娘に手紙を書き置きしてきた。
1人で留守番をしてくれるのだから、彼女も成長したものだ。

羽田空港に余裕で到着したが…
羽田空港駐車場は比較的ゆとりがあり、駐車場の枠に車を真っ直ぐにとめ、眼鏡をかけ車を出て、スーツケースを取るために後方席のドアを開けたら、なかった。
スーツケースがなかった。
ああ、トランクだったか、とトランクも開けようとする。
しかし同時に、出がけにトランクを開けた記憶はないし、いまトランク内はコントの衣装と水でスペースがいっぱいで何も入らないから開けるわけないな、と頭に浮かぶが、だけど開けた。
開けるしかない。
やっぱりわたしの記憶は正しく、コントの衣装が乱雑に入っていた。
もう一度後方席のドアを開けるが、ない。
トランクに戻りコントの衣装の下を、あるわけないけど探してみる。
わかってたけど、ない。