ただし、この現象が起きるのは年に2度、2月22日と10月22日のみ。この日は、王の誕生日と即位した日という説もありますが、未だ解明されていません。

実は、1960年代、この一帯はダム建設に伴い水没の危機に陥りました。エジプトとスーダン両政府の要請を受けて、ユネスコが国際的な救済キャンペーンを展開。その結果、60以上の国や企業の協力を得て、近隣に移築する大規模工事が行われたのです。これを機に、世界各地の宝を保全すべく誕生したのが、「世界遺産」でした。

当時、私はこの一連の動きを新聞で知り、国や人種を超えて人類が手を取り合い遺跡を救済したという事実に胸を打たれました。人々の思いをかくも集める存在。その素晴らしさを伝える写真家になりたいと願い、私の世界遺産を巡る旅は始まったのです。

 

アブ・シンベル大神殿 至聖所
至聖所。神殿の内部には、緻密な壁画が描かれている(撮影:富井義夫)
世界遺産登録名/3 アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群
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