フォロワー1万人の今もSNSの奴隷
あれから何年か経ち、お金で買っていないフォロワーも1万人を超えたけれど、私は今もSNSの奴隷だ。
ほほう。ライバルのあの人が著名人とおしゃれなカフェでランチをしている写真をまたあげている。
「大好きな〇〇さんとランチでした。パワーをたくさんもらったから明日からまた頑張るぞ!」
へー。有名人とお知り合いで、すごいですね。フォロワーももう4万人になってるんだね。あちこちのメディアで見かけるようになり、本もたくさん売れている様子で、すっかりインフルエンサーですねえ。
自虐で笑わせようと必死なのが透けて見えてしまっている私の投稿は今日もどん滑りしていて半日で1300ビューなのに、「これから歯医者に行ってきます(ハート)」と足元の写真をあげている彼女の最新の投稿は、30分ですでに1万ビュー。
なんで歯医者行くのにそんなヒール履いてんだよ。ちっとも「いいね」と思わないけれど、「いいね」しないと嫉妬していると思われそうなので、ギリギリと歯を食いしばりながら「いいね」を押す。もちろん嫉妬は死ぬほどしている。
もっとフォロワーを増やしたい。もっと認められたい。少しでも「いいね」が欲しい。キラキラした写真をアップして、すごいと思われたい。
「わー、斉藤ナミさんからコメントをいただけるなんて感激です!」
そんなことを言ってもらえると、まるで自分が有名人になったようで気分が昂揚する。
有名人に「いいね」や「リツイート」をしてもらえると「この人が私に賛同してくれた!」と世界中に言いふらしたくなる。
ほら、私はこんなに認められているんだ! 私にはこんなに価値があるんだ!
悲しいことが起きても、ここぞとばかりに何もかもを自虐にして140文字でつぶやく。もっと「いいね」が稼げるネタはないか? 朝から晩までSNSのネタを探す。ドカンとバズってフォロワーが一気に増える体験を一度すると、またバズりたいと欲が出る。
1万人に到達すると、今後は3万人にしたくなる。3万人に到達すればきっと10万人にしたくなる。フォロワーが多ければ多いほど、私はすごい人になれるんだ。もっと、もっと……!