私に本当に必要なこと分かっているのに…

子どもの学校のPTA活動でも、町内会のお掃除でも、編集部の人たちとのオンラインMTGでも、何も変わらない。結局、私はいつも頭の中で文章を考えてばかりでろくな返事もできず、キョドってばかりの人間のままなのだ。そんなもの、変わるはずがない。SNSの私なんてネットの中だけの偽物なんだから。

SNSなんてやっていなくても芸能人のゴシップを面白おかしく話せるママ友のほうがみんなに好かれている。フォロワーが500人でも、私が逆立ちしたって書けない素晴らしい文章を書いている人がいる。フォロワー数なんてなんの証明にもならない。そんな虚像でしかない数字だけを追ったって、手元には何もない。

友達とのランチ、オシャレなスイーツ、新しい商品のリリース報告、優雅な旅行やキャンプ……なんていうキラキラした様子を不特定多数に向けてどんどん誇示して「いいね」を集めて永遠に承認欲求を満たそうとし続ける。

もう分かっている。誰だっていいところだけを見せている。そんなものと自分”を”比較したってしょうがないし、SNSでキラキラして見えているものは自分が持っている価値観とは大きくズレている。新しいものも、騒がしいところも好きじゃない。旅行も苦手だし、快適な家の中で美味しいクッキーを食べながら読書をすることが一番幸せだ。

SNSとは現代人を歪ませるために作られたのかと思うほど、要らない嫉妬や劣等感をボコボコと生み出しブクブクと増幅させる装置みたいだ。自分に自信がなく、周りにどのくらい認められているかで価値を測ってしまう私に、SNSという比較中毒者の墓場みたいな場所はどう考えても向いていない。恋人の動向を四六時中見張ることも、過去の恋愛を遡ることもできてしまうし、もうスマホごとカチ割ったほうがいい。

私に本当に必要なのは、あの人より多いフォロワー数でもなく、著名人の知り合いでもなく、SNSの向こう側にいる人たちからの「いいね」でも、承認でもない。隣にいる人に気さくに話しかける勇気や、このままで幸せだと感じる力だ。

分かっているのに今日も「いいね」を集めようと反則技であるネコのかわいい写真を撮ってつぶやいてしまうし、あの人の動向を追いかけてはギリギリしながら、接待「いいね」をしている。

喫茶店でお茶する斉藤ナミさん
1日の何時間をスマホと向き合っているんだろう
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