<前回のあらすじ>
「なんで……ウソでしょ?」
連続殺人【ホルスの目殺人事件】の6件目の現場で万琴が目撃したのは、全身をめった刺しにされた女性と、レインコート姿でナイフを持って立つ浩暉だった。
震える手でなんとかカメラを向ける万琴を残し、浩暉は窓から逃げていく――。
警察の事情聴取を終えて職場に戻った万琴に、野田は生出演を命じるが、沙樹は休ませると猛反対。「私のネタです!私がやります!」と怒鳴る万琴。誰も寄せ付けないその空気に心配する一同。
一方、合同捜査本部は逃走した浩暉を殺人未遂容疑で全国に指名手配する。
翌朝、生放送で万琴のスクープ映像が公開され、ついにあらわになった連続殺人鬼・設楽浩暉の姿に日本中が震撼。放送直後から、SNSには犯人を取り逃した万琴への非難の声が集中し、番組にも責任を問う電話が殺到する。
心配した沙樹に勧められるまま休職することになった万琴だが、茫然自失で現実を受け入れることができず……。
万琴のマンションに集まる向葵(森田望智さん)と正聖(白洲迅さん)。家宅捜索の結果、浩暉の部屋からは何も見つからなかったという正聖は、浩暉が犯人だとは思えなくなっている様子。
6件目の被害者には注射痕もなく、警察への通報者も不明で、腑に落ちないことばかり。向葵は先日、浩暉を呼び出して万琴に近づかないよう忠告した時、浩暉は去り際に『万琴が殺されないように、目離さないで』とささやいたという……。
そんな中、週刊新流のネット記事に衝撃の見出しが躍る。『僕がホルスの目殺人事件を始めた理由』――逃亡中の浩暉の手記だ。浩暉は記事の中で、10年前の母・設楽久美子(紺野まひるさん)殺害事件の真犯人も自分だと明かす。
エリート意識の高い高慢な母が許せなかったと動機を説明し、母を殺したことで殺人衝動が覚醒。母のようにキャリアがあり、プライドが高く自己顕示欲が強そうな女性を選んで連続殺人を犯していたという……。
衝撃的な記事に警察や世間が騒然となる中、浩暉は犯行の手口や意味を詳細につづった新たな手記を次々とネットにアップしていく。
「病院のデータベースをハッキングし、健康な血を持つ女性からターゲットを選定」、「被害者の血を抜いたのは、忌々しい母の血を埋めるための儀式」、「コンタクトは、他人の本質を見ず、肩書きで評価する高慢な被害者に【真実を見抜くホルスの目を与えるため】」、「偽りの目でこの社会を汚す奴らに制裁を」――。
しかし、万琴は記事の内容に違和感しかなく……。
万琴は野田から公園に呼び出される。自分が見て来た浩暉は全部嘘だったのかと落ち込む万琴に、野田は「世の中、100%のウソはあり得ねえよ。99%がウソだとしても、1%の真実を必ずおまえは見てる」――そう言って、食べていたきんつばの包み紙を押し付ける。万琴が「ゴミじゃないですか!」と突き返そうとするが、野田は「ゴミじゃねえよ!」と言って去ってしまい……。
浩暉の手記に違和感を抱いているのは万琴だけではなかった。野田も、木下(小林虎之介さん)も、週刊新流の尾高も、同じことを感じていた。
一方、逃亡中の浩暉は、ある墓前で手を合わせる。そこに一人の女性が現れ……。
万琴は野田が「ゴミじゃない」と言ったきんつばの包み紙が気になり、その店へ向かうと、貫路(萩原聖人さん)と遭遇する。万琴をアパートに招いた貫路は「ここは、野田さんが紹介してくれて」。
実は貫路は、10年前の判決の時から「手記を書け、インタビューさせろ」と野田に言われ続けてきたという。「なぜか知っていたんです。私が冤罪だって……」。貫路は久美子を殺していなかった。
しかし、警察が浩暉を疑っていると知った貫路は、全ては自分のふがいなさが招いた事件だと思い、親として浩暉の罪をかぶることに決めたのだった。
貫路は『ホルスの目』とも無関係だが、浩暉の身代わりになるつもりで、あえて怪しまれる行動をしたという。「息子を殺人鬼にしたのは私です…」。
すると奥の部屋で話を聞いていたみくる(齋藤飛鳥さん)が出て来て、「浩くんは、殺人鬼なんかじゃない!だってお母さんを殺したのは私だから」。みくるはそう言うと、その場にバタッと倒れてしまう……。
病院で輸血を受け、みくるは意識を取り戻す。実はみくるは、国の指定難病『再生不良性貧血』に侵されていた。しかし、命の危険があるにもかかわらず、戸籍がないため、今まで病院に通っていなかったという。
みくるの産みの母親が出生届を出さず、久美子もそれに気付いていながら戸籍に入れなかったのだ。病気が発覚したのは浩暉と一緒に実家を出た後。治すためには骨髄移植が必要だが、1千万円はかかってしまう。保険証もなく治療費は実費となり、輸血でしのいだとしても毎月10万円以上かかる……。
やはり、ホルスは浩暉がみくるの輸血のためにやったことなのか…?思案する万琴は、向葵が持ってきてくれたハーブティーの香りをかいだ途端、何かに気づき……。
そんな中、浩暉の新しい記事がアップされる。『7月7日に最後の殺人を実行する。始まりの場所で、この連続殺人の終止符を打つ。LIVE配信で見届けてください』――。
万琴はみくるから鍵を借りて浩暉の部屋に入り、押し入れの中から古びた缶ケースを見つける。缶の中には、子どもの頃の浩暉の名札と3枚の桜の花びら。浩暉が「大切なものは最後までとっておきたい」と言っていたのを思い出す万琴は、今までの浩暉の笑顔を思い出して泣き崩れる。
それは、浩暉が逃亡してから初めて流した涙……とその時、万琴は缶の底に何かを見つけ…。
「私、全部分かった。私が浩暉を止めるから」――。
7月7日、万琴は正聖にそう告げると、向かったのは、営業していない古びたスーパー。薄暗い店内に足を踏み入れ、ゆっくりと歩く……と、後ろから誰かに襲われ、首にナイフを突きつけられる…!それは黒いレインコートを着た浩暉で――!?
万琴の耳に、浩暉がささやく…「わざわざ殺されに来るなんてバカだなあ」――。