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自給自足で本当の豊かさを手に入れる

手をとりあって楽園のような農場を完成させた夫婦のドキュメンタリー。

テレビ番組やドキュメンタリー映画の監督・カメラマンである夫ジョンと料理研究家の妻モリーは、ロサンジェルスの小さなアパートメントに暮らしていた。いつか自分たちの農場を持ちたいと夢見ながら、実際はベランダでミニトマトを育てるのがせいぜい。

ある日、2人は殺処分寸前だった犬を飼い始める。トッドと名づけた犬はすぐに彼らになついたが、家に残されると絶え間なく吠え続け、夫婦は退去を迫られてしまう。

ここで彼らは、大胆な賭けに出る。トッドが好きなだけ吠えられるよう、そして自分たちの夢を叶えるべく、農場への引っ越しを決めたのだ。ロサンジェルスの北西にある200エーカー(東京ドーム約17個分)の、長いこと放置されていた「アプリコット・レーン・ファーム」だ。

 

ジョンが製作・監督・脚本・撮影監督をつとめたこのドキュメンタリー映画は、2010年に彼らが農場に越してからの、8年間にわたる奮闘を描いたもの。荒れ果てた土地の整備から始まる過酷な作業が続くが、彼らは「農業インターン」を募って何人もの若者の力を借りる。近所に住む農業のエキスパートから多くの助言をもらう。

こうして、広大な果樹園と、多種多彩な農作物、羊や豚や鶏などの家畜が暮らす、小宇宙のような農場が出来上がっていく。それは彼らが最初から目指していた、なるべく多様な生命を自然に近い形で育むという願いを実現したものだ。

作物が虫にやられ、鶏がコヨーテに襲われ、山火事が迫ってくる。だが、そのたびに自然界が解決法を示してくれる。

美しい自然に囲まれた自給自足の暮らしは、アメリカの絵本作家ターシャ・テューダーを思い出させる。ドキュメンタリー映画『ターシャ・テューダー 静かな水の物語』(2017年)に描かれた晩年のターシャは、バーモント州の山奥の美しい庭に囲まれた小さなコテージに暮らし、必要なものは自分の手でつくる生活を楽しんでいた。

あるいは、愛知県の郊外に暮らす老夫婦を描いた『人生フルーツ』(16年)にも通じる。菜園の規模こそ違えども、動植物を慈しみながらの生活が観客の心にも潤いを与えるのが、3作の共通点である。

本作のもうひとつの魅力は、ジョンとモリーのいつも明るくリラックスした雰囲気だ。自然との共存を心がけているが、ガチガチな思想に凝り固まっているわけではない。2人とも善良な頑張り屋さんで、特にモリーの笑顔はとてもチャーミング。美しい農場の風景と夫婦の絆に、観客も大きな贈り物をもらったような喜びに満たされる。

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ビッグ・リトル・ファーム
理想の暮らしのつくり方


製作・監督・脚本・撮影監督/ジョン・チェスター
出演/ジョン・チェスター、モリー・チェスター
上映時間/1時間31分 アメリカ映画
■3月14日よりシネスイッチ銀座、新宿ピカデリーほかにて全国順次公開

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北部の島で11歳の少年が出会ったのは

オランダ北部の島で夏の休暇を過ごす一家。11歳の少年サムは、いずれは誰もが死に、末っ子の自分は天涯孤独になるという不安を抱えている。

そんな彼が地元の風変わりな少女と知り合うことで、さまざまな体験を積んでいく。大人も爽やかな感動に満たされる児童映画の傑作。

3月20日よりシネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開

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恐竜が教えてくれたこと

監督:ステフェン・ワウテルロウト

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世界経済史をピケティがわかりやすく解説

世界的ベストセラーとなったトマ・ピケティの同名著作を、本人の監修および出演で映画化。映画や小説をふんだんに引用しながら、過去300年の世界経済史をピケティがわかりやすく解説してくれる。今、世界中で貧富の格差がのっぴきならないレベルになっていることに、改めて震撼。

3月20日より新宿シネマカリテほかにて全国順次公開

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21世紀の資本

監督:ジャスティン・ペンバートン