耕書堂を出たてい
「江戸一の利き者」である蔦重の役に立てないと感じ、耕書堂を出た蔦重の妻・てい。
以前ていが出家を考えていたことを話していたため、ピンときた蔦重は、ていが寺の門をくぐる前になんとか追いつきます。
蔦重に呼び止められると、「江戸一の利き者の妻は、私では務まらぬと存じます。私は石頭のつまらぬ女です。母上様のような客あしらいもできず、歌さんや集まる方たちのような才があるわけでもなく。できるのは帳簿を付けることくらい」と家を出た理由についてあらためて語ったてい。
続けて「今を時めく作者や絵師や狂歌師、更にはご立派なお武家様まで集まる蔦屋にございます。そこの女将には、もっと華やかで才長けた…たとえば吉原一の花魁を張れるような、そういうお方がふさわしいと存じます。どうぞお許しくださいませ」と伝え、深く頭を下げます。