山本家の場合

《突然ふりかかる病》介護する自分自身ががんに

認知症の母を介護しています。突然、私に乳がんが見つかり、手術のため入院することに。入院中と退院直後の4週間、親の介護はショートステイを利用して乗り切りました。

しかし治療のため、パートは退職することになり、いまだに仕事復帰できていません。そんな状態でも、待ったなしで親の介護の連絡が来るのです

 

ショートステイ代⇒1万3000円×28日
36万4000円

 

介護を担う子どもが病気にかかることも

親と同居しながらの介護は、親中心の生活になるので、子どもが自分の病気に気づくのが遅れるケースが増えています。

一家の大黒柱である介護者が急病で倒れた場合には、収入も大幅ダウンするでしょうし、最悪の場合、子どもが要介護の親を残して先立つという例もあります。

そんな突然の事態も視野に入れて、介護計画を考えたいものです。

 

吉田家の場合

《故郷の父に責められ》働き盛りが離職して、単身で帰省

Uターン介護の準備資金⇒退職金250万+貯金350万円
合計600万円(1年半で底をつく)

中小企業で一生懸命働き、それなりに将来を期待されていましたが、父の介護をするため、50歳を目前に退職しました。理由は「近所の人がよくしてくれるのに、息子のお前は何をしているんだ」と父親から責められたから。

1〜2年で父の介護が終わると思い込み、妻と小学生の子どもを自宅に残して単身で帰郷。しかし親の世話に疲れ果ててしまい……

離職せずに介護する選択を

現代の子ども世代が働く環境の厳しさや忙しさを、親世代に理解してもらうのはなかなか難しい問題です。また、介護期間は長ければ10年以上ということを知らない人も多いようです。吉田さんも同様で、実家と自宅の二重生活は想像以上にお金がかかり、わずか1年半で生活が破綻、消息不明になってしまいました。

原因として考えられるのは、吉田さんが一人で介護を抱え込んでしまったことにあります。ほとんどの人が、介護問題を家族・親族だけで解決するものだと思い込んでいますが、現実的には困難です。また、在職中には保たれていた社会との接点が、離職によってまったくなくなってしまうことも珍しくありません。

いきなり介護離職を選択せず、まずは勤務先に相談してみましょう。「介護休暇」や「介護休業」の制度もありますし、離職せずにすむよう協力したいと思っている会社も多くあります。

もしどうしても辞めなければいけない場合は、現在の貯金だけで10年間、自分の生活の維持と親の世話をできるかシミュレーションすることも大切です。仕事のブランクが1年以上空くと、新しい職場を見つけるのは非常に難しくなることも理解しておきましょう。