『女たちのシベリア抑留』著:小柳ちひろ

 

ソ連で収容所生活を送った1000人近い女性たち

本書は2014年に放映されたドキュメンタリー『女たちのシベリア抑留』を書籍化したもの。長く沈黙を守っていた女性抑留者たちへのインタビューに成功したこの番組は、文化庁芸術賞優秀賞など、その年のドキュメンタリー作品に与えられる賞を総なめにした。

終戦直後、ソ連が投降した日本軍兵士をシベリア等に連行し、強制労働をさせた。そのシベリア抑留者の大半は兵士だったが、なかに女性たちもいたことはあまり知られていない。従軍看護婦、軍属、電話交換手など1000人近い女性たちが収容所生活を送ったといわれているが、記録も資料も少なく、詳細ははっきりしない。

また帰国した女性たちを待ち受けていたのは、好奇と偏見と憎悪に満ちた世間の目だったという。そのため女性たちは抑留体験を「思い出したくないこと」と封印し、沈黙してしまったのだ。

著者は、ロシアと日本を何度も行き来しながら、貴重な資料を探し出し、綿密な取材によって女性抑留者の総数と全体像を明らかにしていく。戦後70年以上、これほどまでに長い間、歴史の闇に葬り去られていたことに胸がふさがる思いだ。

そして声を上げ始めた元女性抑留者、主に従軍看護婦たちの証言に耳を傾けることになる。いざというときのため青酸カリの瓶を懐にしのばせていたこと。極寒の地での強制労働、飢え、病。いつの間にか次々と姿を消していく仲間たち。これまでの抑留者のイメージとは違う、女性ならではの壮絶な体験が語られる。後半はさらにつらい。

重く衝撃的なテーマだが、文面からは女性ディレクターらしいデリケートな配慮と並々ならぬ覚悟が感じられた。読むべき、知るべき一冊である。

『女たちのシベリア抑留』
著◎小柳ちひろ
文藝春秋 1700円