「「やりたくない」と思うことはちゃんと拒否しないと、「気持ちいい」に行けないって思うんだよね」(桃井さん)

年だけ取って死んでいくのはイヤだから

桃井 人間は誰しも老けていくわけだけど、どういうふうに過ごしていけばもっと楽しいかなということを、我々世代は真面目に考えないといけないなって思う。老けていくことがつらくてつらくて……と悲観的にばかり考えると、もうちょっとカッコイイ時に死ねばよかったねって話になっちゃうからさ。

だったら、もう少し長生きを小洒落たことにしないと。『婦人公論』でも、「私たち、ピンクが似合うお年頃よ」って感じで、みんながピンク着てる特集を組むとかさ。私たちが老後の女性たちの未来を拓く!

大楠 そういうのはいいわね。

桃井 俳優なんて、みんなタイミングのいいところで死ぬのが理想でしょ。何だかんだで私はその機会を失って、ちょっと長生きしそうな気がするじゃない。その時は、「ほら、長生きしたほうがよかったでしょ」って若い世代に言えるような力業を見せたいのね。そのためには何をやったらいいのかなあって。

大楠 私も手探りしているのよ。死ぬまでの間、どんなふうに自分の時間を楽しく、素敵に過ごしていけばいいかなって。ただ年だけ取って死んでいくのはイヤだから。

桃井 それはイヤよ。絶対に。

大楠 年齢が上がってくると、やれないこともいっぱい出てくる。若い頃はなんとか無理して頑張ったけど、今はもう無理してやることはないと思って、やりたくないことを全部切っていったらすごく楽になった。だから、仕事にしても、イヤなものはやらない。一つの仕事が終わったら、またやりたい作品が出てくるまで1年でも2年でも家で料理作ったり、庭の手入れをしたり。

桃井 日本の女優の中でも、大楠さんはすっごく余裕があるわけよ。歴史はあるし、なにせ大金持ちだから(笑)。大楠さんが一番、正当に仕事を選んでいると思う。

大楠 でもそうやって選んでいるとね、いらないことばっかりになっていくのよ。だから、「やりたくない」「会いたくない」ばかりでもいけないなと思って。

桃井 でも、「やりたくない」と思うことはちゃんと拒否しないと、「気持ちいい」に行けないって思うんだよね。私が14年前に日本を離れてロスに行ったのも、日本にずっといると断り切れない仕事がいっぱい出てくるから。そこまでやりたくないなと思った時は逃げる(笑)。場所を変えただけでも新鮮なのよ。