不幸も幸福も

母は祖母の気質を活火山に喩える。燃えたぎるエネルギーで祖母は苦境を乗り越えたが、時折噴き出すマグマに母は絶えず傷つけられていた。

それでも母は祖母に寄り添うしかなかった。母にとっては不幸も幸福も、祖母から与えられるものだった。それは母が結婚した後もそうだった。

祖母が母を自分の側に置いたのは、「響子の幸福は自分が与えなければならない」と思っていたからではないかと私は考えている。

還暦を過ぎて母は漸く、自らの幸福を自ら追求できるようになった。

老人ホームで暮らす祖母を見舞いに行かない母は親不孝者だろうか。「自分で自分を幸せにできる人になる」、その成長そのものが親孝行だと私は思っている。

 

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