
夢をよく見る…
101歳を迎えた作家の佐藤愛子さん。100万部突破の『九十歳。何がめでたい』(2016年、小学館 )をはじめ、ユーモアエッセイで長く人気を博しています。百寿者とは思えぬ仕事ぶりの一方で、家族からみた佐藤愛子さんの姿とは。孫の杉山桃子さんがコミックとエッセイで描く『婦人公論』の連載「うちのばあさん101歳」。第7回目は「穏やかな会話」。
穏やかな会話
夢をよく見る。一時は夢日記をつけていたほど、私は夢に対する関心が強い。
一番よく見るのは30歳を過ぎても高校に通っている夢。その次に尊敬するミュージシャンの夢、それから祖母の夢である。
祖母が施設で生活し始める前は、そこまで頻繁に祖母の夢を見ることはなかった。見たとしても、1階に住んでいる祖母が我々のいる2階に上がってきて、それをきっかけに喧嘩になって祖母を棒で叩くとか、やたらに攻撃的な夢だった。
自分の祖母に対するストレスが夢から垣間見えて、自分の夢に苦笑したものである。
しかし祖母が施設に入ってからは、定期的に夢に出てくる。夢の中の祖母は頭も明晰で、認知症を発症する前のような、それでいて実際よりも穏やかに話をするのである。