蜷川幸雄の遺志を継いで創り出す
小栗旬が11年ぶりに“蜷川組”に帰ってくる! 故・蜷川幸雄が芸術監督を務めていた彩の国さいたま芸術劇場で、シェイクスピア37作品をすべて上演するべく始めた「彩の国シェイクスピア・シリーズ」。あと5作品を残して他界した蜷川の遺志を継ぎ、同シリーズの要として活躍していた吉田鋼太郎が2代目芸術監督に就任、いよいよ『ジョン王』が上演される。蜷川を舞台人としての恩師と仰ぐ小栗は、第14弾『お気に召すまま』(2004年)、第15弾『間違いの喜劇』(06年)以来の同シリーズ出演だ。
イングランド王ジョン(横田栄司)のもとに、先王リチャード1世の私生児だというフィリップ・ザ・バスタード(小栗)が現れる。そこへフランス王フィリップ2世(吉田)の使者が到着し、イングランド王位を正統な王位継承者アーサーに譲り、領地を引き渡すよう伝える。ジョン王はさっそく挙兵するが、バスタードが両軍に戦闘地の市民への攻撃を提案したため、両者は一転、協力体制をとる。ところが市民がイングランド王女とフランス皇太子の結婚による和睦を促すと、賛同した両王によって結婚式が行われることに。今度はそこへローマ法王の大使が現れて……。英国史上“最も悪評の高い王”とも言われるジョン王(1167〜1216)の治世を描く歴史劇だ。
本シリーズのほかにも、蜷川作品に多数出演してきた小栗。なかでも主演を務めた『カリギュラ』(07年)、藤原竜也の宮本武蔵に伍して佐々木小次郎を演じた『ムサシ』(09年)など、厳しく演出をつける蜷川と必死に喰らいつく小栗の熱いタッグが “伝説”となった舞台もある。あちこちのインタビューで、晩年はケンカをして距離があったと語る小栗だが、同時に“ずっとあの場所(蜷川の舞台)に戻りたいと思っていた”とも話しているのは、今だからこそ口にできる本心だろう。
今回は蜷川がたびたび試み、人気を博してきた“オールメール”(女性の登場人物も男性キャストが演じる)での公演。小栗が出演したシリーズ2作もそうだった。蜷川の匂いが残る“あの場所”へ、いよいよ小栗が帰還する。
ジョン王
6月8〜28日/埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
作/W・シェイクスピア
演出/吉田鋼太郎(彩の国シェイクスピア・シリーズ芸術監督)
出演/小栗旬、横田栄司、中村京蔵、玉置玲央、白石隼也、植本純米、吉田鋼太郎ほか
☎0570・064・939(SAFチケットセンター)
※名古屋、大阪公演あり
※本公演は全公演中止が決定されています
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三谷版『ショーガール』
1974年から88年まで、木の実ナナと細川俊之の2人だけでシリーズ上演されていた『ショーガール』。歌と踊りで小粋に綴られる大人の恋物語は、海外の映画で目にしていた、自立した男女の姿そのもの。
演劇という枠を超えて多くの人を虜にし、PARCO劇場の代表作の一つにもなった。そして観客の一人だった三谷幸喜が旧作へのリスペクトを込め、2014年から三谷版『ショーガール』をスタート。
手て練だれのエンターテイナー、川平慈英とシルビア・グラブの2人で、第一部はショートミュージカル、第二部は華やかなショータイムを展開する。夜10時からの公演も設けているので、食後酒がわりに足を運んで。
7月16日〜8月7日/東京・PARCO劇場
脚本・作詞・構成・演出/三谷幸喜 振付/本間憲一
作曲・編曲/荻野清子
出演/川平慈英、シルビア・グラブ
演奏/荻野清子(ピアノ)、一本茂樹(ベース)、萱谷亮一(ドラムス)
☎03・3477・5858(パルコステージ)
※大阪公演あり
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“日本のこころ”を描き続ける
小津安二郎の名作『東京物語』を、「男はつらいよ」シリーズの山田洋次監督が舞台化して好評を博したのが8年前のこと。
翌年には再演も果たし、新派の新たなレパートリーとなった本作が待望の幕を開ける。物語は昭和28年の夏、故郷・尾道から久しぶりに東京に出てきた老夫婦、周吉ととみが、子供たちの家を訪ねるところから始まる。
日々の生活で精いっぱいの長男と長女に戸惑う2人を見かね、東京案内を買って出る次男の未亡人・紀子。満足した様子で尾道に帰った2人だったが、とみが急逝して……。
周吉役は、新派初出演の大地康雄。失われゆく“日本のこころ”を描き続ける新派ならではの舞台を送る
東京物語
6月7〜28日/東京・三越劇場
作/小津安二郎・野田高梧『東京物語』より
脚本・演出/山田洋次
出演/水谷八重子、波乃久里子、瀬戸摩純、 石原舞子、児玉真二、田口守、大地康雄ほか
☎0570・000・489(チケットホン松竹)
※上演期間は変更の可能性があります。最新の情報は、各問い合わせ先にご確認ください