官邸官僚
政権と“同化”する
官僚が増えている
俗に「官僚」と呼ばれる人たちがいる。国家公務員の中でも難関の上級甲種試験などに合格した、いわゆる「キャリア」のことを指す。国家公務員である以上、彼らは国家、ひいては国民への奉仕者のはず。だが最近は、総理官邸(政権)への奉仕にばかり熱心な人たちが目につくようになっている。そんな人々のことを「官邸官僚」と呼ぶ。
2019年3月6日、内閣法制局の横畠裕介長官が、国会の行政監視機能を説明する中で、野党議員の質問について「(国会の機能は)このような場で声を荒らげて発言するようなことまで含むとは考えていない」と批判。これが「法制局長官の役割を逸脱する発言だ」として、野党から厳しい批判を浴びた。官僚が国会の場で政治的発言をするのは、前代未聞だ。
内閣法制局は、法令案の審査や法制に関する調査などを所掌する、いわば“法の番人”であり、政府の中での権威は大きい。横畠氏がなぜこのような発言をしたのか。おそらく、本来の立場を忘れ、自分を政権の、つまり官邸側の人間だと勘違いしたからだろう。「僕、安倍チームのメンバーだもん」といった感じか。官僚がその時々の政権に仕え、働くのは当然の職務だ。だが、それと特定の政権と同化し、「官邸側の人間」になることとは別。そこには越えてはいけない一線があるはずだ。
横畠氏に限らず、最近は総理官邸やその周辺に身を置く官僚の中に、自分を政権側の、あるいは政権内部の人間だと考えているように見える人が少なくない。彼ら「官邸官僚」の存在が、隠蔽や改ざん、忖そん度たくや国会軽視を生み出しているのではないだろうか?(伊藤惇夫)
定額制グルメ
常連を創り出す、
魅力的なシステム
「毎日1杯、無料でかけうどんが食べられます」。2019年1月、東京・蒲田に、そんな気前のいいうたい文句を掲げた店がオープンした。店の名は「ミノラス食堂」。「無料」にするためには、会員になって毎月決められた一定額を支払う必要がある。だが、その額はわずか540円(税込)。毎月1〜2回食べればペイするだろう。
実は昨今、「毎月、一定額を支払えば○○が無料」というお得な飲食店が増えている。いわば「定額制グルメ」。「サブスクリプション(略称サブスク)」と呼ばれる方式を採用しているのだ。もとは雑誌や新聞の「定期購読」の意味だったらしい。その方式が、Amazonが月額・年額で展開する「Amazonプライム」などIT系サービスを皮切りに、いまや外食産業にまで広がっている。
「定額制グルメ」の草分けが、東京・西新宿などに展開しているカフェ「コーヒーマフィア」。16年10月、飲食店に特化したマーケティング会社が開業。たとえば月額3000円コースの会員になると、通常1杯300円のラージサイズコーヒーが期間中、毎日無料で味わえる(ただし1来店につき1杯限り、対象商品のみ)。1ヵ月に10回以上通わないと元は取れないが、近隣に勤める会社員などには便利だろう。
いっぽうで、顧客が店の想定以上に通い詰めると「赤字」になる可能性もある。それなのになぜ、飲食店は定額制を採用するのか。
理由は2つありそうだ。1つは、定額分の収入が確保でき、店の経営が安定すること。もう1つは「会員(メンバー)」登録する顧客が増えれば、その属性や利用状況が把握でき、次のサービスや商品開発に活かせることだ。実は利用者も店も、メリットが大きい定額制グルメ。皆さんも、一度利用してみては?(牛窪恵)