Photo by Shohei Yokoyama(馬場ふみか)

KAAT神奈川芸術劇場プロデュース
恐るべき子供たち

5月18日~6月2日/神奈川・KAAT神奈川芸術劇場大スタジオ
原作/ジャン・コクトー(中条省平・中条志穂訳『恐るべき子供たち』光文社古典新訳文庫)
上演台本/ノゾエ征爾 
演出/白井晃 
出演/南沢奈央、柾木玲弥、松岡広大、馬場ふみか、デシルバ安奈、斉藤悠、内田淳子、真那胡敬二
☎0570・015・415(チケットかながわ)

歪んだ愛情が築いた“王国” で
姉と弟に訪れる運命は

KAAT神奈川芸術劇場が、多彩な才能を発揮したフランスの詩人ジャン・コクトーの小説『恐るべき子供たち』を舞台化し、芸術監督・白井晃の演出で上演する。思春期の姉と弟の激しすぎる愛憎関係が起こす悲劇を描いた詩的作品だ。上演台本を手がけるのは、劇団「はえぎわ」を主宰し、劇作家・演出家・俳優として活躍するノゾエ征爾。2012年に岸田國士戯曲賞を受賞し、近年は『鳩に水をやる』(17年)、『命売ります』(18年)など劇団外での活動も注目されている。

物語の中心は、美しくも残忍な姉エリザベートと、青白く病弱な弟ポール。中学生のポールはある日、雪合戦でダルジュロスという男子生徒の投げた雪玉に当たり、血を流して倒れる。友人のジェラールは雪玉に石が入っていたと主張するが、ダルジュロスに憧れていたポールは彼をかばう。しかしその負傷が原因でポールは学校をやめ、姉のエリザベートとともに家に籠もって気ままな日々を過ごすように。ジェラール以外はほとんど誰も訪れない部屋で、姉と弟の蜜月が続く。

病気の母が亡くなると、エリザベートは婦人服店でモデルとして働き始め、そこで知り合った娘アガートが部屋に出入りするようになる。ポールはアガートを邪険に扱うが、それはダルジュロスそっくりな彼女への想いの裏返しだった。やがてエリザベートは結婚するが、直後に夫を亡くす。夫から受け継いだ屋敷で、エリザベート、ポール、ジェラール、アガートの奇妙な生活が始まった。そしてダルジュロスが現れ、運命を運んでくる……。

主要キャスト4人には、清新な若手が起用された。姉エリザベートを演じるのは、今年上演された舞台『罪と罰』でラスコリニコフの妹役が印象的だった南沢奈央、そして弟ポールはドラマ『今日から俺は!!』で人気を博した柾木玲弥。ジェラールには松岡広大、アガートには馬場ふみかが入る。馬場はダルジュロスも演じるというから、彼女の美少年ぶりも楽しみだ。さらに子供たちを見守り、時に抑圧する「大人たち」に、デシルバ安奈、斉藤悠、内田淳子、真那胡敬二の実力派が揃う。

独自の美学で舞台を染める白井と、日常的な描写が微苦笑を生むノゾエ。作風が異なる二人のタッグが、コクトーの耽美世界でどんな化学変化を起こすのか。期待が高まる。

 

 

少年王者舘
1001

5月14~26日/東京・新国立劇場小劇
場作・演出/天野天街
出演/珠水、夕沈、中村榮美子、山本亜手子、雪港、小林夢二、宮璃アリ、池田遼、る、岩本苑子、近藤樺楊、カシワナオミ、月宵水、井村昂、寺十吾、廻飛呂男、海上学彦、石橋和也、飯塚克之ほか
☎03・5352・9999(新国立劇場ボックスオフィス)

1982年に天野天街(てんがい)によって旗揚げされ、唯一無二の存在感で人気を集める劇団「少年王者舘」が新国立劇場に初登場する。50本以上の作品で展開された独特な台詞回しと映像、ダンスが渾然一体となった天野ワールドは、郷愁と一抹の怖さが漂い、五感を刺激してやまない。今回は、王妃シェヘラザードが生死をかけて物語を紡ぎ続ける説話集『千夜一夜物語』の、外枠の大きな物語に短い物語を埋め込む入れ子構造を採用。1=ある、0=ない、0=ない、1=ある、という二進法の世界を展開する。物語の中に物語、そのまた中に物語と、交替したり解体したりする無限ループから、魔法のような曼荼羅的世界が出現するはずだ。

 

戌井昭人

文学座5月アトリエの会
いずれおとらぬトトントトン

5月9~21日/東京・文学座アトリエ
作/戌井昭人 
演出/所奏
出演/田圭祐、加納朋之、沢田冬樹、椎原克知、亀田佳明、萩原亮介、越塚学、飯川瑠夏、前東美菜子
☎0120・481034(文学座チケット専用)

舞台は、東京オリンピックが開かれた1964年の日本。山奥にある精神病院では、なにかと交信している患者、音楽家になりたい患者、スリッパ拳法を操る患者、毛布にくるまっている患者などがいて、医師や看護師の管理のもと、自分を主張することを禁止されて過ごしていた。そこに一人の男がやってきて、奔放な振る舞いで騒動を起こす……。人間の自由と尊厳を描いたジャック・ニコルソン主演の映画『カッコーの巣の上で』から着想を得た戌井昭人の新作が、所ところ奏かなでの演出で上演される。2017年の『青ベか物語』に続く戌井・所コンビの作品で、前作同様、戌井特有のおかしくも諧かい謔ぎゃく的な世界を、所がテンポよく立体化するだろう。