施設に入るためだったり、伴侶に先立たれた余生の希望を叶えるためだったり──。親によかれと思って子どもは片づけを進めようとするのです。でも実際は親の頑固さに振り回されて衝突が絶えない、そんなケースも少なくありません
《カズエさんのケース》
「モノが多いって豊かだわ」
夫の実家が片づかない場合、相手は姑だけに直言が難しい。
「私にとって一年で一番ゆううつな日は、ごみに囲まれた元日なんです」
東海地方に住む福祉系職員のカズエさん(55歳)は小声で、夫の実家でのお正月について語った。
夫の実家は名古屋にある。義父は15年前に亡くなり、古い一戸建てには義母(80歳)がひとりで住んでいる。長男である夫は少し離れて暮らし、次弟は独身、末弟は家族と実家の近くに住む。家は、義父の骨董品や、義母があちこちで買ってきたモノと空き箱、包み紙、古雑誌……が山をなしている。
「義母は昔から、和裁にお紅茶教室、フラダンスと多趣味。お出かけとお買い物が生きがいです。義父亡き後にどんどん家が荒れ出したのですが、『モノが多いって豊かだわ』と悪びれないんです」
夫が義父の遺言に従って猛然と片づけに取り掛かったが、義母からカンカンに怒られて中断した。
「あの時、もう家に上がるなとキレられたのが堪えたらしく、今は一切、口を出しません。兄弟みんな、お母さんが大好きだから、問題を先送りにしています」