「全部要るから捨てないでね」

今年は夫がついに、ホテルのレストランで集まろうと義母に持ち掛けたが、それも「お正月のホテルなんてバカ高いわよ」のひと言であっさり却下。がっかりしながらカズエさん一家が元日に訪ねたところ、義母は明るく「ごめんなさーい、かき分けて座る場所を作ってちょうだいね」。居間の和室は状況が一段と悪化していた。

「紙袋、文房具、レシート、チラシや手紙類、和裁の道具、分類不能の小物類がびっしり。ざざざっとよけて座りました」

微妙に異臭が漂うが、壁際まで段ボール箱が積みあがっていて、窓も開けられない。しかし「全部要るから捨てないでね」と言われ、明らかにゴミらしきものを紙袋へ。

義母が居間で「監視」している合間に、カズエさんと義妹、大学生の姪っ子が台所に行って食事の準備をする。骨董の和食器を使う決まりなのだが、棚から発掘して洗おうにも、食洗機は満杯で、シンクはカオス状態だ。

「このスポンジって何年物? 布巾じゃ拭けないわ、ペーパータオルはどこ? って、毎年女たちがお台所でバタバタします」

カズエさんも昔は訪問着で出向いた。しかしここ数年は和服どころか、黒いウールすらホコリを吸い寄せるので絶対着ない。

「化繊のつるっつるの服で行って、3時間我慢して、転げ出てくる(笑)。いつかあの家を片づける日が来ることが心底、コワいです」