『東京バレエ団 ドン・キホーテ 全2幕』Photo: Kiyonori Hasegawa

床屋の息子と恋人を包むご機嫌なムードに身を委ねて

バレエ作品を観る楽しみにもいろいろあるけれど、観るだけで気分がアガることで有名なのが、この『ドン・キホーテ』だろう。おなじみドン・キホーテと従者のサンチョ・パンサも登場するが、バレエ版のメインは床屋の息子バジルと、その恋人のキトリ。スペイン・バルセロナの喧騒のなかで、エネルギッシュな闘牛士と踊り子のダンスや、妖精たちの優美な踊り、さらには情熱的なスパニッシュから、フィナーレの主役ペアによる華麗なグラン・パ・ド・ドゥまで、畳みかけるように多彩なダンスが展開。観終わった後の高揚感はひとしおだ。

物語は、バジルがドン・キホーテの顔をあたっているところから始まる。バジルの仕事が終わるのを待っているキトリを見て、騎士物語に取りつかれているドン・キホーテは彼女をドゥルネシア姫と思い込んでしまう。父親からバジルとの結婚を反対されているキトリは、ドン・キホーテやサンチョ・パンサが起こした騒ぎに紛れてバジルと駆け落ちするが、やがてドン・キホーテたちもその後を追ってきて……。

東京バレエ団で上演される『ドン・キホーテ』は、20世紀ソビエト時代のボリショイ・バレエを代表する伝説のダンサー、ウラジーミル・ワシーリエフによる演出・振付だ。彼はダイナミックなテクニックと的確な演技で、『ドン・キホーテ』『スパルタクス』など数々の名舞台を残してきた。本作の演出でも、ボリショイ・バレエならではのクラシカルな香気と、モダンで明るい感覚が融合された舞台を創り出し、今では東京バレエ団の代表作のひとつとなっている。

今回、バジルとキトリは、それぞれトリプルキャストで上演。キトリ役に、海外の劇場への出演も多く、キトリを当たり役とする上野水香のほか、美しい立ち姿で人気の川島麻実子、2018年よりプリンシパルを務める沖香菜子。バジル役には、ベジャール振付の『ザ・カブキ』や『ボレロ』で主役を演じてきた柄本(つかもと)弾。さらに手練(てだれ)の秋元康臣、こちらも18年からプリンシパルとなっている宮川新大(あらた)と、それぞれに個性を発揮するダンサーがそろった。舞台上だけでなく客席までもが祝祭的な気分に包まれる『ドン・キホーテ』。夏のひととき、その楽しい空気に身を委ねたい。

東京バレエ団
ドン・キホーテ 全2幕


7月18、19日/東京・東京文化会館
振付/ウラジーミル・ワシーリエフ (マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴールスキーによる)
音楽/レオン・ミンクス 指揮/ワレリー・オブジャニコフ
演奏/東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
出演/川島麻実子・上野水香・沖香菜子(キトリ・トリプルキャスト)、 秋元康臣・柄本弾・宮川新大(バジル・トリプルキャスト)ほか
☎03・3791・8888(NBSチケットセンター)
※本公演は9月に延期されています。
詳細は東京バレエ団公式サイトhttps://thetokyoballet.com/でご確認ください

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『三谷文楽 其礼成心中』

 

文楽や歌舞伎でもおなじみの演目『曾根崎心中』は、元禄年間に実際に起きた情死事件を題材に、近松門左衛門によって書かれたもの。それが大ヒットし、「心中もの」がブームになった当時は、舞台である大阪・天神の森で心中しようとする男女が後を絶たなかったとか。

本作は、森の入り口で饅頭屋を営む夫婦が「心中もの」流行にかこつけて人生相談を始め大もうけするも、商売敵が現れて……という人情物語だ。2012年の初演以来、好評を受けて京都と大阪でも上演された“三谷文楽”。

現代の文楽界を引っ張る人気の太夫たちが、三谷のテンポのいい戯曲に乗せて、市井の人々の笑いと涙を活写する。

三谷文楽
其礼成心中


8月13〜20日/東京・PARCO劇場
作・演出/三谷幸喜 作曲/鶴澤清介
出演/竹本千歳太夫、豊竹呂勢太夫、鶴澤清介、吉田一輔ほか
☎03・3477・5858(パルコステージ)

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『トムとディックとハリー』

 

舞台はロンドン。養子を迎える最終面接を前に緊張気味のトムのところへ、弟のディックが海外の旅から戻ってくる。

タバコとブランデーを大量に抱えたディックは、これを売ってお祝いの費用にしてほしいと言うが、それは明らかに違法。困惑するトムの前へ、今度は末の弟ハリーが協力したいと“ある物”を持ってきて……。

世界の演劇人に大きな影響を与えた英国人劇作家にしてコメディの名手、レイ・クーニーと息子マイケルの共作が待望の上演。兄弟を演じるのは、舞台での経験を重ねてきたユニット「宇宙Six」のメンバーで、ダンスなど身体能力には定評のある3人。

中屋敷法仁のスピード感ある演出で、抱腹絶倒の舞台が楽しめそうだ。

トムとディックとハリー

7月11〜19日/東京・サンシャイン劇場
作/レイ&マイケル・クーニー
演出/中屋敷法仁 出演/江田剛、山本亮太、原嘉孝(以上、宇宙Six)、 能條愛未、市川しんぺー、福本伸一、坂口理恵、筒井俊作、原田樹里
☎03・3477・5858(パルコステージ) ※大阪公演あり

※上演期間は変更の可能性があります。最新の情報は、各問い合わせ先にご確認ください