
政治家の質を上げるには
「同じ政党でも『この人を選びたい』『あの人を選びたい』と思う有権者もいるだろう。候補者と政党の両方を選ぶことができたのは中選挙区制の一つのメリットだった」=白鳥氏
「日本は二院制だ。衆院選ですくい上げられなかった多様な民意は、3年に一度行われる参院選で反映できるので無駄になることはない。しかも参院は非常に権限が強い」=竹中氏
伊藤徹どの選挙制度にもプラスとマイナスの両面があると思います。そして日本は二院制ですので、衆院だけではなく、参院との役割分担を踏えながら、ふさわしい制度を考える必要があります。この30年の検証とその先の見直しを行うとすれば、どのような視点が大切になるでしょうか。
伊藤俊30年を振り返った時、政治家の質は果たして向上したのでしょうか。そこは気がかりです。小選挙区制になり、政治家が以前より小粒になったように感じます。一つの選挙区から1人しか当選できないことから、広く薄く訴えるゼネラリスト型の政治家は増えましたが、官僚と互角に議論できるようなスペシャリスト型の政治家は減りました。そしてポピュリズムが目立つようになりました。加えて1議席を巡る争いから、説得より論破に走る政治家も見られるようになりました。対決型の政治は国会の運営にも影を落としているように思います。
小選挙区制は、「風」が吹くと多くの議員が入れ替わります。特に若手の現職は落ちやすく、政治家としての経験値がなかなか上がりません。代わって当選してくる「チルドレン」と呼ばれる新人の振る舞いも、「振り子」が振れるたびに問題になりました。政治家をどのように育てていくのか。有権者にとっても大切な課題です。
伊藤徹どのような選挙制度でもそうなのかもしれませんが、当選さえすれば何をしてもよいと考える政治家は増えているように思います。衆院の選挙制度を巡っては、選挙前、衆院議長の下で与野党協議会を開いたり、超党派の議員連盟で議論したりしていました。制度を見直すとしたら、「中選挙区制は選択肢の一つではないか」という意見も聞こえていました。
伊藤俊私も中選挙区制は一つの選択肢になると思いますが、利益誘導やカネのかかる選挙にまた戻らないかと危惧する声があります。1人を選ぶ単記制か、複数を選ぶ連記制か、候補者に順位をつける移譲式か、などの論点もあります。30年の検証を踏まえて、丁寧に考える必要があります。選挙制度は政党の生き残りに関わります。大勝した自民に今、制度を改めるインセンティブは働かないでしょう。いわゆる「身を切る」改革として、定数削減の議論も出ています。党利党略が絡み合うなら、かつての選挙制度審議会のような第三者に検討を委ねることも一つの知恵ではないでしょうか。

伊藤俊行/いとう・としゆき
読売新聞編集委員
1964年生まれ。東京都出身。早稲田大学第一文学部卒業。1988年読売新聞社入社。ワシントン特派員、国際部長、政治部長などを経て現職。

伊藤徹也/いとう・てつや
調査研究本部主任研究員
広島県出身。京都大学総合人間学部国際文化学科卒業。1998年読売新聞社入社。浦和支局、政治部次長などを経て現職