専門家が独自の目線で選ぶ「時代を表すキーワード」。今回は、政治アナリストの伊藤惇夫さんが、「訓告(処分)」について解説します。

大スキャンダルでも、組織内での処分に?

5月21日発売の週刊誌報道で、新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言の期間中、黒川弘務東京高検検事長(当時)が賭けマージャンに興じていたことが発覚。同日黒川氏は辞職したが、その処分が「訓告」だったことが波紋を広げた。

処分内容が「軽すぎる」のではないか、という声が高まったこと、さらに、退職金もほぼ満額の7000万円近くになることも批判に拍車をかけた。退職金について、安倍総理は「訓告処分で減額された」と述べたが、「訓告」は減額対象とならない。自己都合退職による減額規定で、約6000万円になっただけだ。

国家公務員が不始末をしでかした場合、その処分は中身によって6段階に分かれている。重いほうから免職、停職、減給、戒告、訓告、厳重注意(法務省の処分には、さらに軽い「注意」がある)がそれだ。ただ、この処分、実は、2種類に分かれている。戒告以上は法律に基づいた「懲戒処分」で内閣が決め、それ以下(訓告から下)は実務上、あるいは監督上の措置だから、組織内で行うことになる。

今回のような「訓告」は上司である検事総長が処分する仕組み。会社でいえば、戒告以上は取締役会での処分事項、訓告以下は部長が部下を叱るようなものといってもいいだろう。

今回の処分に関しては「軽すぎ」批判に加え、処分内容の決定過程で、内閣つまり安倍政権の意向が働いたのではないか、という疑念も浮上している。ちなみに、2017年には黒川氏と同じレートで賭けマージャンをした自衛隊員らが停職処分を受けている。いかにも不公平な気がするが、この違いはなぜ?