いつも居るリビングを最優先で快適に

実家は飲食店を営んでおり、1階がお店、2階が父の生活空間、3階は母の荷物がぎっしり詰まった空間でした。私は週に2回、午後1時から6時までを片づけの時間と決めました。自分の生活もあるし、体力的にも精神的にもそれが限界だったからです。しかしあらかじめ時間が決まっていると、時間内に終わらせたいと思うもので、意外とサクサク進みましたね。

片づけは「出す」「分ける」「処分する」「しまう」の4つのステップで進めました。これは整理収納アドバイザーにとって、片づけの基本です。この基本にのっとって、父が最も長い時間を過ごすリビング、寝室、毎日使う台所、洗面所の順に進めました。この間も父は実家で生活していますので、少しずつスペースを広げていくのです。

「これ、いる? 使う?」という会話を繰り返しながら、どんどん余白が広がっていくのは気持ちがいいもの。とはいえ、実際の作業は気の遠くなるほど延々と続きます。そんなときも片づけの基本に立ち返り、目の前の小さなものひとつからでも手を動かし続けていきました。

父はもともと几帳面で、ものがあふれている家が快適ではなかったようです。しかし、あまりのものの多さに何から手をつけてよいかわからなかったのだそう。父がよく使うものだけを残し、収納家具から小物まで、大量に処分するだけで20ヵ月以上かかっています。あの頃は「ぼちぼちやろう」が、父と私の口癖になっていました。

 

《母の寝室》

母が自宅療養となり、最初に片づけた寝室(左:片付け前)。たくさんの人が出入りするため、床にものを置かないようにした。母亡きあとは、ものの「一時避難部屋」として活用(右)

《ベランダ》

物干し台には大量のハンガーと不要な植木鉢で足の踏み場もなかった(左)。きれいになるにつれ、父は「これは、やりだしたら止まらんなるな〜」とどんどんやる気が(右)