政治家の劣化に、世襲の要素は大きい

安藤 私の師は政治家の小粒化や劣化の背景として、二世から三世に移っていったことを挙げていました。まあ、三世だからダメと断定するのは乱暴かもしれませんが……。

伊藤 「売り家と唐様で書く三代目」と言うように、昔から三代目は身代を潰すとされてきました。たしかに近年の政治家の劣化に、世襲の要素は大きいでしょう。それとセットになっているのが選挙制度です。1994(平成6)年に政治改革関連法案が成立し、選挙制度や政治資金制度の改革、政党交付金制度の導入などが実現することになった。これが後の政治の形をがらりと変えます。

安藤 そのときに公職選挙法が改正され、衆議院選挙が中選挙区制から、1選挙区に1名のみを選出する小選挙区中心の制度になったわけですね。正確にいうと「小選挙区比例代表並立制」。これは政治の大転換点でした。

伊藤 小選挙区制はまさに後藤田さんの下で私たちが作ったのですが、これに関してはすごく反省しています。政権交代が行われやすいという理由で導入したものの、我々が当初考えていた狙いとはまったく違う方向に行ってしまった。私は今も失敗の理由について考えています。

安藤 小選挙区制って不思議ですね。得票率を見ると大して自民党が取っているわけではないのに、選挙でどんどん勝つ。最終的に議席の数は多くなるけれど得票率は低いという奇怪な現象が起きています。

伊藤 単純小選挙区制だったらまた違ったと思いますけれどね。今は並立といいながら、比例復活という架け橋をかけてしまっていることも問題を複雑にしています。

安藤 小選挙区で落ちた人が比例で復活してくる。これは国民から見ると納得がいかない部分があります。

伊藤 ええ。また小選挙区だと有権者が候補者を見ずに、政党や党首の人気度で投票してしまうケースが多い。その結果、数々のスキャンダルを生んだ「魔の三回生」みたいな現象も生まれてきてしまうのですね。