「ミュージカル ハウ・トゥー・サクシード」

お調子者の清掃員に出世の道は?

『努力しないで出世する方法』という本を読んだ清掃員フィンチは、早速その内容を実行に移し始める。本に書いてある「入るべきは大企業」の通り、大手のワールドワイド・ウィケット社の郵便室にもぐりこんだフィンチ。やがて働きぶりが認められて郵便室長に指名されるが、フィンチはある意外な人物にその座を譲る。実はそれも本の指示だったのだが、周囲の人間は大感動。社員たちや社長までも巻き込んで、フィンチの出世街道はどこまで続くのか……?

ブロードウェイで1961年に初演、トニー賞7冠も達成して、いまも世界中で愛されている本作。その魅力はやはり、会社というコミュニティでの“あるある”を見事に描き出した点だろう。50年代のアメリカの会社が舞台なのだが、2020年の日本でも思わず共感してしまうのは、人間の営みが変わらぬ証なのか、それとも……?お調子者だが憎めないフィンチを、人気の増田貴久が演じるのも注目だ。

ミュージカル ハウ・トゥー・サクシード

9月4~20日/東京・東急シアターオーブ
脚本/エイブ・バローズ、ジャック・ウェインストック、ウィリー・ギルバート
作詞・作曲/フランク・レッサー 原作/シェパード・ミード
演出・振付/クリス・ベイリー 翻訳・訳詞/高橋亜子
出演/増田貴久、笹本玲奈、松下優也、雛形あきこ、春野寿美礼、今井清隆ほか ☎0570・550・252(ぴあ公演事務局) ※大阪公演あり

*****

「ミュージカル フラッシュダンス」

いま観ても新鮮な感動を与えてくれる名作

ここ数年、若い世代を中心に1980年代のファッションや音楽が人気だ。オーバーサイズのトレーナーをラフに着るのはすっかり定着し、YouTubeで当時のポップスを知って愛聴する人も多いとか。そんななか、80年代テイストがギュッと詰まったミュージカル『フラッシュダンス』の日本版が満を持しての上演だ。83年に公開され大ヒットを記録した同名映画をもとに、映画版の脚本・原案を手掛けたトム・ヘドリー自らが舞台版の脚本も執筆。ダンスと音楽をよりフィーチャーし、ヒットソングの生演奏とともに大迫力でよみがえる。

83年のアメリカ。ピッツバーグの製鉄所で働くアレックス(愛希れいか)は、夜はバーのフロアダンサーとして踊りながら、プロのダンサーになることを夢見ていた。彼女に製鉄所の御曹司ニック(廣瀬友祐)は一目惚れするが、アレックスは彼の言葉をはねつける。そんななか、親友グロリア(桜井玲香)からダンスの名門校のオーディションを勧められた彼女は参加を決意。だが独学でダンスを学んできたアレックスは、オーディション会場で自信をなくし、途中で飛び出してしまう……。

「What A Feeling」「Maniac」「I Love Rock’N Roll」など、耳にすれば“あの曲!”とすぐにわかるヒットソングが満載の本作。夢や友情、そして恋愛に傷つきながらも少しずつ成長してゆくアレックスの姿は、いま観ても新鮮な感動を与えてくれる。もちろん『フラッシュダンス』といえば、アレックスが見せる名ダンスシーンの数々!舞台版でもしっかり盛り込まれているというから期待したい。

今回、アレックスを演じるのは、これが宝塚退団後初の単独主演作となる愛希れいか。在団中はトップ娘役として宝塚史上3番目に長い就任期間を誇った彼女だが、人気の理由はそんな“華麗なる”肩書からイメージされるものとは、少々異なる。可憐だが親近感のあるルックスに、ため息や呼吸までもが芝居の余白を埋めるリアルな演技、感情がはっきりと伝わるエモーショナルなダンス。それだけに、アレックスはまさにハマり役だろう。彼女と本作の邂逅によって、映画版の興奮をそのまま舞台で観られる幸運を喜びたい。

ミュージカル フラッシュダンス

9月12~26日/東京・日本青年館ホール
脚本/トム・ヘドリー、ロバート・ケイリー
作詞/ロバート・ケイリー、ロビー・ロス
作曲/ロビー・ロス
日本版脚本・訳詞・演出/岸谷五朗
出演/愛希れいか、廣瀬友祐、桜井玲香、福田悠太(ふぉ~ゆ~)、春風ひとみほか ☎03・3234・9999( チケットスペース) ※名古屋、大阪公演あり

※上演期間は変更の可能性があります。最新の情報は、各問い合わせ先にご確認ください