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「もったいない」精神の国は有数の食材廃棄国

まだ食べられるのに捨てられてしまう食料、食品ロスが社会問題になって久しい。いまや世界の食料の3分の1が捨てられている。

食材救出人、フードアクティビストの異名を持つ映画監督ダーヴィド・グロスは、廃棄食材を美味しい料理に変身させるドキュメンタリー『0円キッチン』(2015年)で話題を呼んだ。『もったいないキッチン』はその続編。前作は欧州5ヵ国を5週間かけて旅したが、今回の舞台は日本だ。福島から鹿児島まで1600キロ、4週間の旅を通して、食品ロスの問題に美味しく楽しく取り組む。

ダーヴィドは日本の“もったいない精神”に魅せられた。だが実は、日本の食品ロス量は世界でも有数で、年間643万トン(2016年推計)。1人当たりに換算すると年間51キロにもなる。その現状の一端を知るために、まず神奈川県の食品リサイクル工場へ足を運ぶ。なんと毎日約35トンの廃棄食品が持ち込まれ、それを原料の一部として約42トンの養豚用液体飼料が生産されるという。工業化された食料生産システムによるロスをリサイクルする一例だ。作りすぎ、規格外などで持ち込まれてくる食材はまさに「もったいない」。

©Macky Kawana

全国至るところにあるコンビニエンスストアでは、日々、おにぎりや弁当が大量に廃棄されている。そんな店舗のひとつ、東京・渋谷のローソンを直撃し、食品ロス削減対策をきく。それだけでなく、捨てられる運命にある食品を救出して、自前のキッチンカーで美味しく料理する。

さらに、ダーヴィドは通訳のニキとともに、福島県いわき市の有機農家や京都の野草料理専門家などを訪ねてまわる。地熱発電で活性化する熊本県小国町では、温泉の蒸気を活用した蒸し料理も体験する。さまざまな土地で彼らが出会うのは、普段の生活のなかで「もったいない」を実践する人たちだ。

農林水産省・環境省の推計によれば、年間643万トンの食品ロス量の内訳は、事業系が352万トン、家庭系が291万トンとなる。驚くことに、食べ残し、直接廃棄、皮のむきすぎなどにより、一般家庭でもまだ食べられる食料が大量に捨てられているのだ。

鳥取県智頭(ちづ)町でパン店を営む渡邉格さんは、野生の菌で発酵させ時間をかけて作るパンを捨てることなどできないと語る。そこには命となる食べ物への畏敬の念が込められていて、印象深い。

今は消費者から生産者が見えにくくなっているが、食材を買うときに、作り手を思い浮かべることで食べ物の無駄は減らせるかもしれない。捨てられる食材を救うことから始まった旅には、「もったいない」を意識することで日常に生かせるヒントがいくつもある。

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もったいないキッチン

監督・脚本/ダーヴィド・グロス
出演/ダーヴィド・グロス、塚本ニキ、井出留美、青江覚峰ほか
上映時間/1時間35分
日本映画 ■8月8日よりシネスイッチ銀座ほかにて全国順次公開

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©2019 – 3D Produzioni and Nexo Digital

 

2019年に開館200周年を迎えたスペインが誇るヨーロッパ屈指の美の殿堂、マドリードのプラド美術館。

ベラスケス、ゴヤ、エル・グレコをはじめとする、王家が慈しんだ珠玉のコレクションを名優アイアンズが案内する。

スペイン黄金時代への興味もそそる至福の美術ドキュメンタリー。

Bunkamuraル・シネマほかにて公開中、全国順次公開

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プラド美術館 驚異のコレクション

ナビゲーター:ジェレミー・アイアンズ

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©TRADEMARK (RED JOAN) LIMITED 2018

 

ジョーン(J・デンチ)はある日突然MI5に逮捕され、スパイ容疑で告発された。

2000年に80代でスパイと判明したメリタ・ノーウッドをモデルに、ケンブリッジ大学のエリート、若きジョーン(S・クックソン)が核開発の機密情報をソ連に漏洩する過程をドラマチックに描く。

8月7日よりTOHOシネマズシャンテほかにて全国公開

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ジョーンの秘密

出演:ジュディ・デンチ、ソフィー・クックソンほか

※上演期間は変更の可能性があります。最新の情報は、各問い合わせ先にご確認ください