板金工へのイメージを変えたい
「父は一瞬、喜んだのですが、『おまえにできる仕事ではない』と、一転して大反対。でも私は覚悟を決めていたので、引きさがるもんか、と」。何度か親子喧嘩を繰り返した後、お互い歩み寄り、09年に事業を継承し、社長に就任した。
「社員も戸惑ったでしょう。なにせ技術を知らない、現場を知らない、お客様を知らないんですから」
往々にして創業社長というのは、ワンマンな面がある。そのため労使関係は決して良好ではなかった。また職人は、自分の意見を口にすることが苦手だ。そこでまずは一人ひとりとじっくり話し、意見を聞くところから始める。
1年後、金融機関から1億円超の融資を受け、思い切って工場のラインを最新式のものに変えた。そのおかげもあって、社長就任後2年で赤字から脱却する。
社員と本音で話すなかで見えてきたのが、板金工という仕事が社会的にあまり認められていないという現実だった。なかには恥ずかしくて板金屋だと人に言えない、という声も。「愕然としました。これではだめだ。この会社にいることを誇りに思ってもらえるようにしなければ、と心に決めました」。
社員からは、顧客の注文に応じるだけではなく、自社製品を作りたいという声もあがるように。そこで意見を出し合ってさまざまな試作品を作ってみたが、商品開発やマーケティングの知識が足りず、なかなかうまくいかなかった。