日本の先に見据える米国

「中国も一国で米国に対抗するのは難しいと考えている。中国、ロシア、北朝鮮は必ずしもひとかたまりではないが、軍事的な協力が深化していることは間違いない」=小原氏

「北朝鮮の核・ミサイル開発は加速度的な進化を見せている。北朝鮮の持つ技術だけでは難しいので、ロシアの技術や関係者から支援を受けていることが想像できる」=吉永氏

伊藤日本は警戒監視の能力を高めなければなりません。中国は一方的に軍事的な緊張を高めたり、日本に「新型軍国主義」のレッテルを貼ったりしているわけですが、中国に対する米国のグリップが利いていれば、ここまでの振る舞いはしないように思います。実際、トランプ氏にそこまでの余裕も意思もないように見えます。

飯塚習氏は9月後半に訪米してトランプ氏と首脳会談を行う予定です。この米中首脳会談は今年後半の外交のハイライトになるでしょう。トランプ氏は5月、北京を訪問して習氏と首脳会談を行いましたが、経済でも安全保障でも思うような成果を上げられませんでした。習氏に主導権を握られてしまい、ノックアウトされたとは思いませんが、判定負けでしたね。

トランプ氏は11月に中間選挙を控えています。しかし、イランへの軍事作戦は戦闘終結に手間取っています。ガソリン価格や物価が高止まりするようであれば、低迷する支持率をさらに押し下げるでしょう。トランプ氏としては、9月の米中首脳会談で、得意とするディール(取引)で中国から経済的な利益などを引き出して、中間選挙につなげたいと考えています。

対する習氏は、焦りを隠せないトランプ氏の足元を見ながら、9月の「再対決」に向けて、再び主導権を握りたい。中国が東アジアで目に余る行動を見せている背景には、露朝との連携もちらつかせつつ、先んじて米国を揺さぶる狙いがあるのでしょう。

伊藤中間選挙後の11月には、中国が議長を務めるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議も開催されます。トランプ氏がまた訪中して習氏と対峙するのか、注目ですね。中国を米国と並ぶ「大国」として印象付けたい習氏との駆け引きは続きます。

飯塚習氏の攻勢に、トランプ氏は同盟国や台湾を守りながら対応できるのかどうか。私は強い危機感を覚えます。吉永さんがおっしゃったように、ロシアと北朝鮮も軍事的な連携を深めています。両国が目を凝らしているのもトランプ氏の動きです。中国、ロシア、北朝鮮は現状、互いに利用し合う打算的な関係ですが、今後も一層軍事的な協力を強化する方向に進んでいくでしょう。日本は、米国に対して東アジアへの関与を働きかけ続けるとともに、反米のつながりにくさびを打つ戦略も模索していくべきです。

解説者のプロフィール

飯塚恵子/いいづか・けいこ
読売新聞編集委員

東京都出身。上智大学外国語学部英語学科卒業。1987年読売新聞社入社。 政治部次長、 論説委員、アメリカ総局長、国際部長などを経て現職。

 

伊藤徹也 調査研究本部主任研究員

伊藤徹也/いとう・てつや
調査研究本部主任研究員

広島県出身。京都大学総合人間学部国際文化学科卒業。1998年読売新聞社入社。浦和支局、政治部次長などを経て現職

 
 

提供:読売新聞